第8回 ダイス式ダイエット(2)

このお話は「ダイス式ダイエット(1)」の続きです。(1)はこちら

第7回 ダイス式ダイエット(1)
オモッチーランドを堪能したケロミとダイス君は、見事に餅太りになってしまった。太っちょの二人は「ダイエットをする」という決意を固める。最高のボデェを手に入れるため、ケロミ達よ、第一歩を踏み出せ!

「パン!」

という音は餅風船が破裂した音だった。そして、空から落ちてきた物体は、あのイガグリ頭の相撲取り族の見習い君だった。

「ごっつあぁぁぁぁん!」

落ちてきた見習い君は、太り過ぎて動きが鈍くなって逃げ遅れたダイス君に直撃した。そして、ダイス君の上で、ぽよんぽよんと緩く弾んだ。

そう、ダイス君は太ってぜい肉だらけ。餅のように柔らかなぜい肉が、ちょうどよい緩衝材となり、見習い君を優しく受け取めたのである。見習い君は、ダイス君の腹の上で身を任せて弾んでいた。ダイス君も、見習い君が小さくて思ったほど衝撃がなかったため、ポカンとして転がったままである。

「ご、ご、ごっつぁんでぇす…」

「あ、君!オモッチーランドで餅風船を持って飛ばされた見習い君!」

「……ごっつぁんです…」

見習い君はやせこけてさらに小さくなっていた。ケロミの0.5人分くらいだった体は、0.3人分くらいになっていた。衰弱した様子で目も虚ろである。

見習い君は、

「も、もち…」

と言い、ダイス君のもっちりと美味しそうな腹部のぜい肉に噛みついた。

「痛いっ!やめてよっ」

ダイス君は、転がりながら見習い君から逃げ、やっとの事で立ち上がり、ケロミの背後に回った。

「見習い君、お腹すいてるの?」

ケロミの問いに見習い君は、首を縦に振り弱々しく答えた。

「ごっつぁんで…す…」

ケロミは「よしゃ」と言い、ケロミの背後に身を隠すダイス君をむんずと掴んだ。

「ややややめれよぉ…」

抵抗するダイス君の通学バッグからケロミが取り出したものは、餅がびっちり入った大きな弁当箱。それを見習い君に手渡した。

「もっ、もっ、もっ、もちっ!ごっつぁんです!」

見習い君は一気に餅弁当を平らげると、体がケロミの0.4人分くらいに大きくなった。さすが成長期だ。腹が満たされ少し落ち着いた見習い君は、少しずつ餅飛行の顛末を話し出した。

「…餅風船をひとつずつ食べて飢えをしのいだでごわす。最後のひとつになった餅風船でさまよっていて、もうダメだと思ったときにケロミ殿ダイス殿に会って助かったでごわす」

「大変だったね」

ダイス君は、カラになった弁当箱の餅の残り香を嗅ぎながら言った。

「これも修行でごわすから」

見習い君は相撲取りらしく胸を張った。小さいながらも相撲取りだ。威厳がある。

「すごい!さすが、相撲取り族!でも、僕たちもダイエットという修行をしなきゃならないんだ」

「ダイエットでごわすか?」

「そうなの。私たち、痩せて宇宙一美しくなる予定なんだけど、どうダイエットしたらよいか分からなくて…」

ケロミは困った顔で言った。

「ダイエットなら、美人山を紹介するでごわすよ」

見習い君が、えくぼを出してにっこりと言った。

「え!?美人山!?」

「そう、引退力士の美人山でごわす。美人山は、今ダイエットセンターを開いているでごわすよ」

見習い君が言うには、相撲取り族は、皆、見習いから相撲取りに同じように成長するが、引退をした後は、個々に成長していくらしい。主なものは、「親方」「おかみさん」「ちゃんこ鍋屋経営者」「プロレスラー」「HNK相撲解説委員」だという。それぞれの資質にあい、かつ、希望して選択した進路に成長をするらしいが、美人山は大そうな美人なので、もちろん「おかみさん」を選んだそうだ。しかし、美人と言えども、元力士……体重は半端ない…パネェのだ…。「おかみさん」を選択した力士達は、まずはダイエットが必須だ。美人山のダイエット方法は、とても効果があった。それは、一般人の間でも話題となり、美人山がめでたく横綱山の妻(将来的にはおかみさん)になった後も、副業としてダイエットセンターを開業することに至ったらしい。ちなみに、相撲取り族は性別が選んだ成長進路によって自然と決定されるそうだ。だから、見習い君も、えくぼの可愛さから推察すると女性になる可能性も充分にあるのだ。

「紹介してよ!そのダイエットセンター!」

ケロミとダイス君はやる気満々だ。

「もちろんでごわす…あっ…」

話しているうちに、見習い君の腹から小さく「どすこーい」という音が鳴り出した。相撲取り族特有のお腹のハラペコ音である。お腹を押さえ、少し照れた可愛い顔をする見習い君にケロミは言った。

「お礼に、ダイス君の『50万円分』の残りの餅をあげるよ」

「本当でごわすか!?」

見習い君は、つぶらな目をクリクリさせて喜んでいる。

「そうなったら決まりだ!」

どうやら、美人山ダイエットセンターは、ダイス君の家の近くを経由して行くらしい。見習い君を連れて、ケロミ達はまずは、ダイス君の家へ向かった。しばらく歩いてダイス君の正方形の家に着いた。

「これだよ…『50万円分』の餅の残りは…」

ダイス君の部屋は、たくさんの餅がつまったダンボールで一杯だった。

「こ・これは、オモッチーランドが開発した、『オーガニックなのにいつまでも柔らか不思議餅♪』ではないでごわすかっ!しかも、しょっぱい系も甘い系も味も色々でごわす!あ!これは、入手困難な『もちもちドリンク』まで…!」

見習い君は、興奮して、汗だかヨダレだか分からないものを体中から出している。

「全部食べていいから!」

ケロミは、元気に言った。少し意地悪な気持ちが混じっていたが、ダイス君から100回も自慢されたのだからこれは仕方がない。(※この国には、「目には目を、餅には餅を」ということわざがあるんダYO)

「ごっつぁんですっ!では、これが美人山ダイエットセンターの行き方でごわす。健闘を祈るでごわす」

ケロミは、見習い君が書いてくれたセンターまでの地図をもらって、じっくりと眺めた。そのケロミが目を離しているすきに、

「……1万円分くらいは残しておいてね…」

と、ダイス君は、餅を無心でパクつく見習い君にそっと耳打ちをした。

こうして、太っちょ二人組は美人山ダイエットセンターへとぽてぽてと向かったのであった。

センターは、歩いて30分くらいの近い場所にあった。「美人山ダイエットセンター」という看板が掲げられている。事務所とトレーニング場があるようで、なかなかの規模のセンターである。

自動ドアを開け、受付のタマネギ族のタマネギヘアーの女性に、

「あの…」

とケロミが恐る恐る声をかけた時、奥から物凄い美人が現れた。

「あ、社長」

タマネギに社長と呼ばれた女性は、端整な顔のみならず、スタイルもグンバツに美しい。化粧もバッチリ。赤い口紅に赤いマニュキア、とっても甘くて良い香りまでする。……しばし、ケロミとダイス君の中2コンビは圧倒されて直立不動になっていた。そんな二人に、社長が気付いた。

「あれ?君達、見たところ、痩せたくてここに来たんだよね」

ニッコリと笑う社長のえくぼを見て、やっとケロミは我に返った。

「そうなんです!見習い君に紹介されてきました」

「了解・了解・りょうかいのすけ!私が、美人山よ」

激烈美人の社長は、やはり美人山であった。変なギャグさえも素敵に聞こえてしまう。カチンコチンに固まった二人を美人山はセンターの事務室に招き入れた。

「君達、中2?」

「はい、そうです!学校には『ダイエット休暇』を申請してきました!」

ケロミが美人にうっとりしながらも、体育会系を気取り明朗快活に言った。(※ケロミは生粋の文化系です。) ダイス君など、さっきから緊張して何も話さない。

「そう、だったら、『中2ダイエットコース』が適用するわね。受講料も安いし、後払いでいいから」

「はいっ、お願いします!」

ケロミとダイス君は、美人山の美しさに気をとられて、目がハート型だ。コース説明をあまり聞かずに、受講を決めてしまった。

「丸い方の君、名前は?」

「さ、西郷ダイスですっ」

「君って、サッカーボール族じゃないわよね…?」

「そうです!サイコロ族です!」

「そう、それは良かった…」

美人山は、意味深な笑みを浮かべ、「じゃあ、早速」と言い、二人を更衣室で着替えさせた後、トレーニング場に案内した。

モデルウォークで歩く美人山、そのすぐ後に続いて歩くケロミは、美人山が意外に和風な美しいなで肩をしているのに気付き、さらにうっとりして眺めた。視線を下に移すと、腰部に装着されたマワシが目に入った。マワシは、相撲取り族のアイデンティティである。このマワシでさえも激烈美人な美人山がつけると、なぜかハイファッションでハイソサイエティでスペシャルトレンディに見え、ケロミは、「今度、アマンゾでマワシ買おう…」と影響を受けまくっていたのであった。

すぐに廊下の突き当たりに着いた。トレーニング場へのドアがある。

「こちらよ」

ドアを美人山が開けると、途端に掛け声と怒声があふれ出した。

「ボールまわせっ!」

「シュートだっ!」

ドアの向こうは、コートになっていて、たくさんの太った受講生が、ダイス君……ではなくサッカーボールを蹴っていた。

「サッカーダイエットよ」

美人山は、輝く白い歯を見せ美しく笑い、ダイス君の丸い頭を人差し指でゆっくりとなぞった。

★★ダイス式ダイエット (3) に続く★★


「シメさばケロ美の小冒険」へのご感想・作者へのメッセージはこちらからお待ちしております。

次回もどうぞお楽しみに!