第9回 ダイス式ダイエット(3)

このお話は「ダイス式ダイエット」の3話目です。1と2はこちらをご覧ください。

第7回 ダイス式ダイエット(1)
オモッチーランドを堪能したケロミとダイス君は、見事に餅太りになってしまった。太っちょの二人は「ダイエットをする」という決意を固める。最高のボデェを手に入れるため、ケロミ達よ、第一歩を踏み出せ!
第8回 ダイス式ダイエット(2)
ダイエットを決意した餅太りのケロミとダイス君。その矢先に、空の浮遊物体が落下するハプニングに巻き込まれる。しかし、それがダイエットの扉を開く鍵となるのであった……!がんばれ、太っちょ二人組!

ダイス君の丸い頭を人差し指でゆっくりとなぞった美人山は、次にケロミのカエル頭巾の目玉部分をちょいと軽く弾くように触った。中2の二人は、禁断の大人の仕草に心震えた。しかし、これを合図に、美人山の妖艶な瞳は、相撲取りの鋭い眼光の瞳に一変した。

「ケロミちゃん、ダイス君、本気だして!痩せるわよっ!どすこい!」

「はいっ!どすこい!」

「はいっ!どすこい!」

ケロミとダイス君は、大きな声で返事をしたが、トレーニング場の受講生徒達のかけ声でかき消されてしまった。しかし、美人山は満足したようにうなずいた。

「では、サッカーダイエットはじめ!」

二人は、他の受講生に混じって練習開始だ。

まずは、ストレッチで、ぶよぶよの体をもちもちと曲げたり伸ばしたりした。その後は、筋トレだ。鉄でできたサッカーボールを腹に乗せてブリッジをしたり、サッカーゴールの柱でポールダンスをしたり……様々な個性的なダイエットメソッドを行った。ケロミとダイス君は、目標とする「宇宙一美しいボデェ」である美人山が側にいることにより俄然やる気が増し、それらのメソッドを制覇していった。そして、二人のたるみきった体のぜい肉は、早くも少しずつキュッとした筋肉へと変化していったのであった。(さすが成長期だNE!( ´∀`))

「はい、じゃあ、君達、次は逆ヘディングメソッドをするわよ」

このメソッドは、ヘディングのようであるがちょっと違う。地面に置いたサッカーボールの上を自分たちが逆立ちをしてジャンプをするのだ。安定感の悪い丸いサッカーボールの上での逆立ちジャンプは至難の技。下手すると首の骨を折ってオダブツだ。筋力とバランス感覚、ジャンプ力と運が必要なのである。ケロミとダイス君は、何度も失敗してオダブツ寸前の危険な目にあった。が、しかし!忘れてはならない、彼らは真の中2。新しいことを吸収する能力が一番優れている中2である。30分もしないうちに、うまくジャンプできるようになったのだ。

「あなたたち、さすが中2ね!」

美人山が褒めてくれると、ケロミ達はさらに得意になり、ただのジャンプではなくなり、コマのように回りながらジャンプをする新技をあみだした。そして、その回転を、4回転、4回転半と自ら難易度をあげていくのであった。

10回転をしながら、ダイス君が隣で回転するケロミに話しかけてきた。

「そういえばさ、お餅レシピコンテストの1位って『S.S』という人なんだってね」

「……そうみたいだね」

ケロミは負けじと11回転を目指しながら返答した。

「『シメさば餅』でしょ?もしやと思ったんだけど……」

クルクル回りながらダイス君が言った。

「……うん、多分そう……」

ケロミは、目が回り始めたのを耐えながら答えた。『S.S』の顔が回転するケロミの脳に浮かんだ。

「でも、住所不明で『100万円分』の餅をもらえないなんて残念だねぇ」

ダイス君はまだ回っている。ケロミは、もう目がグルグルである。脳裏に浮かんだ『S.S』の顔も吹き飛んでしまった。それに引き替えダイス君の回転は、まるで空中に止まったかのようである。さすがサイコロ族の回転マニアである。ケロミは悔しいが実力の差に負けを感じ、11回目の回転でとうとうボール上に着地をしてしまった。そして、そのまま目を回してグラウンドで伸びてしまった。

「ケロミちゃん、大丈夫?」

ダイス君は、心配そうな声だが、まだ空中をクルクル回っている。介抱はしてくれない。回転は30回は軽く超えているであろう。

『ヒトが伸びているのに、まだ回っているなんてフテェ野郎だ』とケロミ苦々しく思いながら、大の字で寝転んでいると、徐々に目まいも治まってきた。吹き飛んでいた『S.S』の顔が脳裏に戻ってきた時に、また、それを吹き飛ばす笛の音が響いた。美人山の美しい笛の音である。

「はい、皆さーん!ちゅうもーく」

受講生達は、みな動きを止め、美人山の方を向いた。

「今日は、私が所属する女子サッカーチーム『なでがたチャパン』のメンバーが来ています。今日は、特別に受講生の皆さんと練習試合をしたいと思いまーす」

美人山の周りには、今活躍中の『なでがたチャパン』のメンバーがいつのまにか揃っていた。受講生達から、歓声があがった。

「すごい本物だ!」

「美しいなで肩だ!」

「一緒に試合できるなんて!」

なでがたチャパンのメンバーは、なで肩のペンギン族やワインボトル族や電球族など、皆なで肩の美人である。なで肩美人のプロと試合をできるなんて夢のようである。

美人山は、テキパキと、練習試合の段取りをした。なでがたチャパンのメンバーは、相手が素人の受講生達なので、ハンデとして逆立ちしながらサッカーすることになった。先ほどの逆ヘディングメソッドが役に立つハンデで、逆立ちのまま走り、逆立ちのまま手でボールを蹴る(というか投げる)のである。しかし、なでがたチャパンはW杯で優勝したチームなので、これくらい差をつけないと同格にならない。まぁ、これくらいにしてもなでがたチャパンが勝つであろう。いや、勝つね、絶対。

もちろん、ケロミとダイス君も受講生メンバーとして試合に出ることとなった。

「では……ピー!」

笛の音を合図に、なでがたチャパンと受講生チームとの練習試合が始まった。美人山達の逆立ちとは思えぬドリブルやシュートに圧倒される受講生達。

それでも、受講生の太っちょ達は力一杯走り、果敢にもボールを奪おうと挑んでいった。なでがたチャパンのメンバーにとっては、軽い足慣らしくらいの試合であったが、受講生達はマジ(本気)モードである。知らず識らずのうちに、激しい有酸素運動によって受講生達の体から脂肪が燃焼されていっていた。ケロミもダイス君も、もちろんそうだ。5分、10分と試合をするうちに、受講生達の体はどんどん餅肉ボデェから筋肉ボデェへと変化していくのが見てとれる。皆、それだけ必死にサッカーボールを追って試合に夢中になっていたのだ。

……しかし、ダイス君は他の受講生と違う気持ちで、美人達に手で転がされるサッカーボールを追いかけていた。サッカーボールをじっとりと凝視していると、なんだか気持ちがソワソワする……、ダイス君は思った。初めてのこの気持ち……嫉妬だろうか?

「サッカーボールが羨ましい……」

何よりも転がされるのが好きなダイス君だ。転がされるのを見ているだけなんて耐えられるはずがない。しかも、なで肩の美人達の手で転がされているのだ!美しい手で、美しい指で!

「も・もう、耐えられん……」

ちょうどそのとき、ケロミが審判にイエローカードを出されて、試合が中断した。全員そちらに注目している。

「今だ!」

ダイス君は、ユニフォームを脱ぎ、しなやかな動きで、サッカーボールとすっと入れ替わった。もちろん、サッカーボールは脱いだユニフォームのそばにおいた。こうしておけば、ダイス君が疲れて伸びて横になっているとしか見えないであろう。

「ピー!」

試合はすぐに再開された。高速で転がされる球体が、誰もまさかサッカーボールではないと気付くことはなかった。そして、ダイス君は、素人のケロミがする、いつもの「転がし」とは違うプロの「転がし」に恍惚状態となっていた。

ただ、一回、試合中にケロミがたまたまボールを受け取れた時があった。

「あれ、このサッカーボール、なんか体がついてるし、赤い目がある……」

と思ったが、すぐに美人山にボールを取られたので、疑問を残したまま、試合は進んでいった。

「ピー!」

笛の音が鳴った。

「そこまでー」

試合は終了。得点は10000対0で、予想どうりなでがたチャパンの圧勝。

しかし、脂肪がとれて体が軽くなった受講生達の気分は爽快である。

ケロミも標準的な中2体型よりも若干細身の理想的なボデェになっていた。

試合の興奮とダイエット成功を喜ぶ歓声の中、なぜか試合で使われていたサッカーボールがむくりと立ち上がった。

「君……!」

美人山は、美しい顔で驚いた。

サッカーボールになっていたダイス君は、なでがたチャパンの強い蹴りを受け、見事に筋肉質の美しい体に生まれ変わっていた。……しかし!なんたることか!

「あれ?みんなどうしたの!?」

ダイス君は、割れたマッチョな板チョコのような胸板を触って満足そうであったが、皆の悲哀がこもった視線に気付き、呆然とした。

★★ダイス式ダイエット (4) に続く★★


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