第26回 修学旅行は暴風雨(2)

<この投稿は暴風雨サロン参加企画です。ホテル暴風雨の他のお部屋でも「ホテル文学を語る」 に関する投稿が随時アップされていきます。サロン特設ページへ>


このお話は「修学旅行は暴風雨(1)」の続きです。

「変わったお宅ねぇ」

発光米先生は、ほかほかと蒸気させた顔で鶴マシーンから降りながら言った。

ケロミとダイス君と発光米先生は、「メゾン・ド・アングラ」の地下100階に到着。ドリル堀田氏の部屋の前に立っている。

「中もすごいンです」

ケロミがベルを鳴らすと、すぐにドアが開いた。

「いらっしゃい」

いつもの貴族的笑顔でドリル氏が歓迎してくれた。

「初めまして。私、昭和ヶ丘中学2157組の担任の発光米と申します。突然お邪魔して申し訳ありません」

発光米先生は恐縮して頭を下げた。そんな突然の来訪をドリル氏はやはり優しい笑顔で迎えてくれた。

「まぁまぁ、寒いから中に入って」

3人はドリル氏の部屋に入った。ケロミとダイス君は、ドリル氏宅には頻繁に遊びに来るので、今や慣れた場所。ダイス君はすぐにソファでくつろぎ、ケロミは、「ドリルさん、私、ミルクティー淹れます」と勝手にキッチンに入っていくほどだ。発光米先生だけは、ほうっと初めて見る飴色の調度品に感心している。視線を移していくと金庫が目に入った。金庫は開かれたままで、中の書庫兼燃料庫がよく見ることができた。

「本が沢山ある!」

発光米先生は思わず嬉しそうな声をあげた。

「どうぞ中に入ってご覧になってください」

ドリル氏が言うと、発光米先生は、

「いいんですか?申し訳ないです……

と言いながらも少女のような軽やかさで書庫の中に入っていった。書棚に並ぶ無数の本の素晴らしさに圧倒されている発光米先生に、後から書庫に入ってきたドリル氏が、そっと声をかけた。

「本がお好きですか?」

発光米先生は、ほかほかと蒸気した顔をドリル氏に向けた。

「えぇ、もちろん!私、チャパン国語の教師なんです」

「ほう、そうですか」

ドリル氏は、ツヤツヤに光りながら蒸気している発光米先生の顔を見返した。その顔はあたかも、炊きたての新米のようにフレッシュで美しかった。(かつ、美味しそう(^p^))そんな発光米先生は、ほんのりと湯気を顔から発しながら喋りだした。

「でも、大学の専攻は古代国語だったんです。ここにこんな古代の書籍があるなんて!」

目を輝かせて書籍の背をそっと触る発光米先生の様子を見たドリル氏は、微笑みながら、一冊の本を棚から取り出した。

「これはオススメです」

「まぁ、これは!」

本の重みをいとおしむように発光米先生は本を受け取った。

するとドリル氏はすぐに別の本を取り出して、発光米先生に見せた。

「この本はご存知ですか」

「書籍名だけ知っていますが、実物を見るのは初めて……!」

発光米先生は、逆に質問をした。

「もしや『とりがいるよ』はありますか?絵本なんですが……

「もちろん!」

ドリル氏は別の書棚に行き、目当ての本を取ってきた。

「わぁ!すごい!」

ドリル氏と発光米先生は、本の話に意気投合し夢中になっている。置いてけぼりの気分になったケロミは、話が途切れるのを待ちきれずに、書庫の二人に向かい大きな声で呼び掛けた。

「先生!ドリルさんにあのことお願いしなきゃ!」

ケロミに急かされて、ドリル氏と発光米先生は、怒られた中2のように、ちょっと照れながら居室に戻ってきた。

冷め始めたミルクティーを飲みながら、4人揃ったソファで、発光米先生は来訪の目的を告げた。ドリル氏は事の経緯を興味深そうに聞いていてくれた。

……ということで、ドリル博士にお願いにきたわけです」

ケロミは、例の『ホテル暴風雨』のパンフレットをドリル氏に見せた。

「この四角い模様が怪しいと思うんです」

ダイス君がパンフレットに載っている例の幾何学模様、バーコードを指差した。

……

ドリル氏は、そのバーコードをしばし眺め、「ちょっと失礼」と言って席を立ち、何やら分からない機械を持ってきて、その機械本体から伸びる読み取り機のような物でバーコードをなぞった。

……

ドリル氏は、無言のままだ。ケロミもダイス君も、もちろん発光米先生も並々ならぬ期待で真剣な表情でドリル氏の作業を見つめている。

その視線を感じたドリル氏は、3人に向かい、尋ねた。

「皆さん、そんなに『ホテル暴風雨』に行きたいのですか?」

3人は即答だった。

「もちろんです!」

「絶対に!」

157組のクラスメート全員の希望なんです!」

ドリル氏は、機械本体の操作パネルをじっと見つめていたが、ふいに顔を上げ、こう言った。

「解読してみましょう!」

ドリル氏の心強い言葉をもらい安心したケロミ達は、その後の連絡は、発光米先生にお願いすることにし、ドリル氏宅を後にした。

……そして1週間後。ホームルームの日だ。議題は、もちろん「修学旅行について」。

発光米先生が、いつも以上にツヤツヤとした顔で教壇に立った。これは吉報を期待してよさそうだ……

「皆さん、良いお知らせがあります」

Oh!びんご!

「発明家のドリル堀田博士のおかげで、シメさばさんと西郷君が入手したパンフレットからホテル暴風雨への行き方が分かりました!」

クラスから歓声か湧き上がった。

(=´∀`)∀`=)(=´∀`)∀`=)(=´∀`)∀`=)(=´∀`)∀`=)

バーコードの解析ができたらしい。ついに修学旅行、ホテル暴風雨に行くことができる!

発光米先生は続けて言った。

「あと、ドリル博士のご厚意で、ホテル暴風雨に行くための乗り物も人数分用意してくださるとのことです」

またもや歓声があがった。乗り物?ドリル氏が作る乗り物は、鶴マシーンのように遊びが凝らしてある。ドリル氏について、ケロミとダイス君からすでに話を聞いていたクラスメートは、皆、期待感が強まった。

そして、1週間後、早くも待ちに待った修学旅行当日とあいなりました(^0^)

「僕、こんなに荷物多くなっちゃった」

リュックのほかに両手にボストンバッグを持ったダイス君は重そうだ。

「何入っているの?」

「うん、お餅だよ」

「暴風雨に行けば、お餅なんて沢山あるよ!?

大きめのリュックひとつのケロミは、自分のリュックを揺らして言った。

「だって、ホテル暴風雨にはなんでもあるんだよ」

「いいよ、お餅すぐ食べちゃうもん」

ダイス君は、早速ボストンバッグからお餅飴を取り出して、自分の目にひとつ、ケロミの口にひとつ投げ入れた。投げ入れられたお餅飴の甘さと沸き上がる暴風雨への期待で、ケロミとダイス君は、にんまり笑顔となった。

そこに、ドリル氏が運転するユンボが157組の待つ校庭に入ってきた。

「皆さん、おはよう」

ユンボから降りてきたドリル氏は爽やかな笑顔だ。ユンボのシャベル部分に沢山のポスターのようなものがくるくる巻かれて入ってる。(?_?)ナンジャラホイ?

「修学旅行の乗り物を持ってきました」

発光米先生にドリル氏は言った。

「例のあれですね」

「そうです」

ふふふ……と二人は笑いあった。

二人だけが分かるような会話にケロミ達は焦れた。

「ユンボじゃないよね?もしかして、あのポスターみたいなものが乗り物!?

「なんか巻かれているし、紙みたい……

ざわつき始めた生徒達に気づき、発光米先生が両手をあげて注意を引き付けた。

「皆さん、ドリル博士が乗り物を持ってきてくれました!一人1……いや、1台です。人数分あります。皆さんに今から配ります」

乗り物が1枚とな?なぬっ!?クラスメート34名は、不思議に思いながらもユンボの前に並んだ。ドリル氏と発光米先生が、「乗り物」を配り出した。その「乗り物」とは……、ユンボのシャベル部分に積んだポスターのようなものだ!ケロミもダイス君も1枚ずつもらった。皆に配り終えると、発光米先生は残った自分用のひとつを手に取りながら言った。

「では、皆さん、巻かれている『乗り物』を開いて伸ばしてください」

発光米先生は、既にドリル氏から乗り物の使用方法を聞いているようだ。隣にいるドリル氏は、発光米先生の説明をニコニコと聞いている。

ケロミは、巻かれたポスターのような乗り物を開いた。それは大きな切手であった!(@0@)

「あ・切手だ!」

その大きな切手型乗り物、「切手マシーン」には、数字と絵が描かれていた。

「ケロミちゃんの乗り物の絵、カエルだね!僕のは、9でサッカーのトロフィーの絵だよ!」

周りを見ると、全て違う数字と絵だった。ケロミのもらった切手マシーンは、なんと「1」の数字とエメラルドの宝石でできたカエルが描かれていた。(ケロミはとてもラッキーですね)

この切手マシーンは、一人乗り用だが、荷物も置いてちょうどよい大きさだ。そして、広げられた切手マシーンは、自然に手を離れ、次々に宙に浮いた。

「わぁ、魔法のカーペットみたい」

35枚の切手マシーンが宙に浮かんだ。

切手マシーンを広げてはしゃぐ様子をずっと黙っていたドリル氏が口を開いた。

「皆さん、いいですか」

ケロミ達は、ドリル氏の方を一斉に向いた。

……2157組の皆さんにひとつ聞きたいことがあります」

なぜかドリル氏の表情は、いつもの柔和さが消え真剣そのものだった。

★★★修学旅行は暴風雨 (3) に続く★★


浅羽容子作「シメさばケロ美の小冒険」第26回、いかがでしたでしょうか。前回もお伝えした通り、このお話は「暴風雨サロン第2回 ホテル文学を語る」参加作。

暴風雨サロン第2回についてはこちらもぜひご覧ください!他のお部屋でも続々とホテル文学が語られ、読者の皆様からの投稿もお待ちしております。

<暴風雨サロン担当者より>1冊の本、1本の映画、1人の人物などにスポットを当て、ホテル暴風雨の執筆陣がそれぞれ勝手に料理する「暴風雨サロン」の第2回です。今回のテーマは、特定の作品ではなく、広く「ホテル文学を語る」としました。「ホテル」が舞

さて、ついに現れたる発明家、ドリル堀田氏の手によりいかにしてだか2次元バーコードの謎は解け、ケロ美の乗り込んだ乗り物といえばこの回のタイトル切手に間違いない!

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親友、西郷ダイス君はこちらの切手ですね。さて、どうなる?

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金色のシャチホコ型リーゼントと顔中の赤い判子で決めていたのが嘘のように清楚で初々しい発光米先生、「蒸気する」とご飯が炊けちゃって異様に美味しそうですが、冷静に戻ると米に戻るの?α化するの?でもいつも炊きたてご飯のようにツヤツヤしていそう!切手が意外と大きいことにもかなり驚きつつ、待て、次号!

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