第27回 修学旅行は暴風雨(3)

<この投稿は暴風雨サロン参加企画です。ホテル暴風雨の他のお部屋でも「ホテル文学を語る」 に関する投稿が随時アップされていきます。サロン特設ページへ>


このお話は、修学旅行は暴風雨(1) (2)の続きです

真剣な表情のドリル氏を前にして、157組の生徒達、そして発光米先生にも緊張が走った。

「皆さんは……、本当に、心から、ホテル暴風雨に行きたいのですか?」

その問いに、皆は声を揃えるようにして答えた。

「もちろんです!」

校庭に響き渡るその堂々たる言葉に、ドリル氏は、やっと表情を和らげた。

「分かりました!必ず楽しく良い修学旅行になります!」

生徒達はその言葉に安堵した。そして、早速、広げた切手マシーンにそそくさと乗り込んでいる。

35号機に乗り込んだ発光米先生が157組の34名の生徒に向かって声を発した。

「皆さんに既にお伝えしたように、私とシメさばさんがドリル博士と連絡を取り合い先導します」

「はい、分かりました!」

先導係という大役を担ったケロミは背筋を伸ばした。発光米先生は説明を続けた。

「この切手マシーンは、乗った人の体の一部のように動きます。難しい運転方法は必要ありません。ただ……

「ただ……?」

「ただ……?」

ケロミ達生徒はゴクリとツバキを飲み込んだ。(@_@)-gokuri!

「ただ、35機全てが連動して動きます。なので、気持ちを『ひとつ』にしないとうまく動かないのです」

「なんだ、大丈夫だよ!みんな暴風雨に行きたいんだもん」

ダイス君が21個の目をキラキラさせて言うと、他の生徒達も

「そうだそうだ!」

「楽勝!」

「ぱねぇ!」

とノリノリで相づちを打った。

発光米先生は、そんな生徒達を愛おしそうに見回した。そして、急に、その顔にα米のごとき固さが加わったかと思うと、発光米先生が乗っている切手マシーン35号が、ふわりと生徒達の頭上高く舞い上がった。

「では、皆さん、ホテル暴風雨への修学旅行、出発です!」

「いざ、ゆかん!」

「ドリルさん、いってきます!」

生徒達が乗った34台の切手マシーンも次々と空高くあがり、ドリル氏の「いってらっしゃーい!」と言う声も、手を振る姿もみるみるうちに小さくなっていってしまった。

切手に乗って空の旅!さぁ、本気モードの修学旅行スタートです!

「ドリル博士、シメさばさん、私の3人の通話にしましょう」

事前にもらったドリル氏発明の豆型通話機を耳に装着した発光米先生は、同じく装着済みのケロミに通話機を通して交信した。ケロミが、豆型通話機をポンポンと押すと、通話相手が切り替わり、3者通話となった。

「調子よさそうですね」

通話機からドリル氏の優しい声が聞こえてくる。

「ドリル博士、どちらに行けばよいでしょう?」

発光米先生がすぐさま指示を仰いだ。

「まっすぐに進んでください」

「はい!分かりました」

低い雲の上まで上昇した157組の生徒は、青空の中、まっすぐ順調進んだ。

「気持ちいい!」

ケロミのすぐ後ろで飛んでいるダイス君も楽しげだ。

しばらくして、ドリル氏からまた通信が入った。

「順調ですか?」

「はい、もちろん!」

ケロミは快活に答えた。

「ケロミちゃんのホテル暴風雨に行きたい気持ちは、点数でいうと何点かな?」

ドリル氏はふいに質問をしてきた。

「不可説不可説転点です!」

即答でR(※「不可説不可説転」1037澗乗」とにかくとほーもなくスンゴイ数字みたいデス……(=0=))

ほほほ……と笑い声で返答したあとに、今度はドリル氏は発光米先生に尋ねた。

「では、発光米先生の暴風雨に行きたい気持ちは何点ですか?」

「不可説不可説転点、もしくはそれ以上ですわ!」

発光米先生も即答だ。(※でも、マイちゃん「それ以上」の数は多分ないよ!! (=0=))

「では、真っ直ぐに進んでください。ホテル暴風雨はそこにあります」

「はい!」

「了解です!」

ドリル氏のいう通り、ケロミ達はまっすぐに進んだ。1時間くらい進んだろうか……あれほど晴れていた空に灰色の雲が現れ始めた。嫌なYOKAN……。そして、ケロミのカエル頭巾にポツリと一粒。(> <)

「あ、雨」

その一粒を合図にするかのように、雨粒はみるみるうちにぱねぇ数となり、風も強く吹いてきた。これは、もしや暴風雨……。ケロミ達は、暴風雨に行く前に、暴風雨に遭遇してしまったのだ!ガビーーーン!!

「皆さん、雨です!切手マシーンの数字部分を右につねってください!」

発光米先生が、後ろを向き、できる限りの大声で叫んだ。

ケロミも慌てて、数字「1」を右にひねると、すぐさま、切手マシーンを覆うように、透明のバリアーが張られた。振り返ると、皆、次々とバリアーを張っている。

「ドリルさん、暴風雨です!……あ、ホテルじゃなくて、嵐の方の!」

ケロミはドリル氏に通信した。

すると、ドリル氏は、

「ケロミちゃん、ホテル暴風雨に行きたい気持ちは何点かな?」

とまた例の質問……( ̄◇ ̄;)ソレ今聞く?

「もちろん、不可説不可説転点の百億倍です!」

「大丈夫。ケロミちゃん、まっすぐ行ってください」

「分かりました!」

ケロミは、バリアーを突き通す大きな声で、157組の皆に叫んだ。

「皆、雨でも大丈夫!このまま行けば、絶対、暴風雨に着くよ!」

「もちろん、ホテルじゃない方の暴風雨なんかに負けないぜ!」

後ろにいるダイス君が威勢のいい声をあげた。

が、最前列で進むケロミの目の前に広がるのはドブネズミ色の雲と無数の雨筋、雷までも落ちだしてきた……。テンコ盛りの暴風雨である。その一飲みにされそうな暗澹たる前方の様子に、ふと、自分は何のために頑張っているのか……、たかが修学旅行になぜここまで躍起になるのか……ケロミの心にそんな気持ちがよぎってしまった。

すると、35台の切手マシーンの速度が落ちだした。

「あれっ!?

ケロミの後方のクラスメートからどよめきが起こった。速度はどんどん落ちる。

「あら、大変だわ!」

発光米先生も慌てた様子だ。しかし、減速はとまらず、ケロミのやる気も上がらず、ついに、35機全て止まってしまった!まずいっ!しかも、そこに落雷の音がっ!

「ドドーーーン!」

泣きっ面に蜂。ケロミに蛇。ケロミの1号機に、ニヤニヤした雷小僧が雷を抱えながら、わざと体当たりしてきたのだ!雷……クリーンな電力であるが、体当たりは許せない!(※いくらクリーンでも電気は危険です)

「あぁぁぁぁ!」

ケロミ、危うし!

「危ないっ!」

しかし、運良く後ろで止まっていたダイス君の9号機のバリアーがクッションとなり、ケロミの1号機は程々の衝撃を受けたが無事だった。

「ケロミちゃん!大丈夫!」

ダイス君がケロミに声をかけた。

他のクラスメート達も、停止した切手マシーンに乗り不安そうにこちらを見ている。

「う、うん……

痺れて後ろにひっくり返ったケロミは、何とか体勢を整えようとした。その時、リュックの中から飛び出した花びら型の葉書が目に入った。ホテル暴風雨滞在中のよん子からの葉書だ。豆ハンモックでご満悦のよん子がケロミに笑いかけている。

「よん子ちゃんに会いたい……。ホテル暴風雨に行きたい……

よん子の顔を見つめていると、しぼんでいたケロミのカエル頭巾に張りが戻り、エメラルド色に光り出した!さすが中2!立ち直りが早いのです!

「皆、ごめん!暴風雨に絶対着ける!頑張ろう!」

ケロミは、クラスメートを、そして自分を奮起させるように、腹の底からの声で呼びかけた。暴風雨の音もかき消すぐらいに。

「よっしゃー!」

ダイス君が雄叫びをあげると、次々にクラスメートの元気な声が返ってきた。

「行くよ!ホテル暴風雨」

「絶対着くって信じてる!」

157組の35名の結束はさらに強固となり、止まった切手マシーンは、また動き出した!雨足は一向に止む気配はないが、よん子の葉書を手に持ったケロミは怖いもの無しだ。

そんなひどい天候の中、発光米先生は、生徒達が不安にならないように、大声で話しかけて鼓舞するのに一所懸命で、どうやらドリル氏の通信はあまり聞いていないようである。そこに、ドリル氏から通信が入った。

「ケロミちゃん、ちょっとお願いがあるのだが……

何やらためらいがちな声である。

「なんスか?ドリルさん」

……いや、ちょっとケロミちゃんの通信を3分だけ切って、発光米先生と私の2者通話にして欲しいんだ……

「うん?何だか分からないけど、分かりました」

ケロミは、(?_?)分からないけど分かったようには言ってみたが、やはり分からないし、通信が途切れるのは不安なので、切ったふりをした。すると、ちょうどよく、発光米先生がやっと黙った。

ケロミの豆型通信機にドリル氏の声が流れた。

「発光米先生……

「ドリル博士、すみません。皆を勇気づけるのに必死になっていて通信がおざなりになってしまいましたわ……

雨足は一段と強くなった。

「いや、いいのです。……実は、あのその……発光米先生と本の話をもっとできたらと思う、の、です。……今度、『どくきのこ』で、い、一緒にどくきのこ餅を、た、食べながらまた色んな本のお話しを……しません……?」

ケロミの前を行く、発光米先生のお米型の顔から湯気が上がるのが見えた。

……

しかし、無言である。

ケロミは、「キャッ!(#> <#)通信切らなきゃ!」と思いつつ、「OKなのっ!NGなのっ!?」と中2的な好奇心が邪魔をし、そのまま盗み聞きを続けた。(※皆さんは真似しないでください)

ケロミの心臓がパックンチョとしていると、同じくパックンチョとしているらしき湯気を立てている発光米先生の声が豆型通信機から聞こえた。

……喜んで!」

その発光米先生の居酒屋の注文受諾のような言葉が魔法の言葉となり、雨や風や雷が突然止んだ。そして、ドブネズミ色の雲は、白く穏やかな雲へとどんどん変わっていった。そして、その白い雲の中の前方に、天に伸びる緑色の細い筋が2本。ホテル暴風雨に植えられているマンネンジュの枝と羊豆の枝である!ケロミは、葉書のよん子が乗っている豆ハンモックと同じ巨大豆が枝についているのを認め、そこが目的地であることを確信した!

「ここだ!」

ケロミは叫んだ。

「ここだね!ケロミちゃん!」

ダイス君も叫んだ。

さらに近づくと、雲の切れ間から、ホテル暴風雨のシンボルタワーの白い灯台が見える。そこには、総支配人のテンペスト氏やベルボーイのメギ君達が、出迎えのため飛んでこちらに向かってきてくれている。

「ドリルさん、ホテル暴風雨が見えました!もうすぐ到着です!」

「そうですか……!実は、発光米先生とケロミちゃんに言わなきゃならないことがあるのです」

「ドリル博士、なんですの?」

「実は、あのバーコードを解析して判明したのは、ホテル暴風雨の長期滞在者の文章や漫画など作品群だけだったのです。結局、住所は分からなかったのです。何も手立てがないまま、157組を旅立たせたことになります。しかし、ホテル暴風雨は、辿り着くべき人は辿り着く場所。必要とする者、縁の深い者は呼ばれるように自然に行き着くことができる場所です。私は、ケロミちゃん達の熱意を知り、必ず辿り着くことを確信して、送り出したのです。なので、無事辿り着けて私もホッとしています」

「まぁ、そうだったんですね……!私達の気持ちを信じてくれて、サポートしてくれてありがとうございます!」

発光米先生の声は涙ぐんでいる。

ケロミもつぶらな瞳を潤ませながら、

「ドリルさん、ありがとう!」

と感謝の言葉を口にした。

そんな話をしているうちに、ホテル暴風雨はどんどん近づいてきた。

地上には、従業員のハナさんやツボミさん達も手を振ってくれているのが分かる。ホテルの4649号室らしき窓から机に向かい執筆中のキノコフェイスが見えた。名付け親のよん子だ!集中しているようで、まだ気がついていない様子。

ケロミ達は速度を落として、総支配人テンペスト氏に誘導されて着陸場を目指した。

バリアーを解き、着陸準備をした切手マシーンに乗った157組の35名にさわやかな風が当たる。

さぁ、これからが修学旅行本番だ!

(=´∀`)∀`=)(=´∀`)∀`=)(=´∀`)∀`=)(=´∀`)∀`=)

ホテル暴風雨で超絶愉快に滞在し、無事枕投げもできたケロミ達であるが、いつか行くかもしれない読者の皆様のためにホテル内の詳細は秘密にしておく。楽しみは秘密のままの方がより魅力的なのだ。そうでしょ?そうだよね。(の▽の)

それに、現代人の読者がホテル暴風雨に辿り着くために、必ず必要な手立ては「想像力」。なので、ケロミ達が楽しんだホテル暴風雨のアレコレをもやもやと想像して頂き、いつか辿り着く日を楽しみにしていて欲しい。私もお待ちしております(^-)-★

●●●おわり●●●


浅羽容子作「シメさばケロ美の小冒険」第27回、いかがでしたでしょうか。

雷小僧の攻撃にも負けず、ホテル暴風雨に到着して、よかった、よかった!そしてドリル堀田氏と発光米先生に、電撃・まさかの恋の予感?マイちゃん先生、旅行中ずっとホカホカ蒸気で炊き立てかと思いますが、34名の中2の引率(大変そうです)、頑張れ!

シメさばよん子先生のメッセージのように、皆様もぜひ、想像力に切手を貼って、ホテル暴風雨に遊びに来てください。

今回完結のお話「修学旅行は暴風雨」は、ホテル暴風雨連載陣がそれぞれ「ホテル文学を語る」というテーマで書く企画、「暴風雨サロン第2回」参加作です。

暴風雨サロンについてはこちらをご覧ください。他のお部屋の記事も紹介しています。

<暴風雨サロン担当者より>1冊の本、1本の映画、1人の人物などにスポットを当て、ホテル暴風雨の執筆陣がそれぞれ勝手に料理する「暴風雨サロン」の第2回です。今回のテーマは、特定の作品ではなく、広く「ホテル文学を語る」としました。「ホテル」が舞

そして、この「修学旅行は暴風雨」で語られていた「ホテル文学」とは……

斎藤雨梟作「ホテル暴風雨の日々」でした。こちらもぜひご覧ください。

次回はいよいよケロミシリーズのクライマックス、たまに出てくると予言された「中冒険」がくるか!?どうぞお楽しみに。

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