第30回 暗黒六面界(3)

このお話は、暗黒六面界(1) (2) の続きです。

「ギョゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!」

頭上に乗っていたミニダイス君が、跳ねるように飛び降り、ケロミ達の前に立った。

「そーです。ケロミちゃん、ここが最初の地獄、『6の目地獄』でーす!ギョケケケ!」

ミニダイス君は、肩を上下に揺らして笑うと、

「では、6の目地獄をお楽しみくださーい!」

と言い捨て、走って横道に入って去ってしまった。黒い立方体の町は、シーンと静まりかえっている。何かが起こるYOKAN……(>_<;)

「怖いよ、ケロミちゃん!」

目から涙、頭から泡を溢れ出しているブリクサは、アルコール臭がひどい。(※復習ブリクサはビールがルーツのドイツ族なので、泣くとビールの涙が出ます。頭部からもビールが出るよ!覚えてね!)

「ケロねえ、もぉやだぁ~」

鷹蜜も半泣きから本泣きに移行中だ。だらしない男子達に左右の腕をガッツリ掴まれ、母性本能にスイッチが入り、強い気持ちが湧き出すケロミ……。超Kakko-E

そこに、前方から黒い立方体が2つ近づいてきた。2人のミニダイス君だ。

「おぅ!そこのねーちゃん!」

近づいてきたミニダイス君達は、不良のようである。片方は下駄を履いて、片方は口(らしき部分)に草をくわえている。不良といっても極めて昭和臭い。きっとダイス君のイメージする不良はこの程度なのだろう。そして、下駄は、なぜかカラカサ小僧が履いているような一本下駄で、それを履いているミニダイス君は、ふらふらと安定感が悪く、けつまずてばかりだ。出来の悪い不良である。その不良の二人組がケロミ達の前に来た。ケロミの腰あたりの高さであるが、偉そうに肩をいからしている。(でも、一人はフラフラしている)

「ねーちゃん達よぉ、ぴょんと飛んでみ?」

草くわえのミニダイス君が言った。

母性本能パワーで力強くなったケロミにとっては、あまり怖くない不良達であるが、左右の男子達は無性に怖いらしい。すぐに言われるがままブリクサがぴょんと飛んだ。すると、学生鞄の中の小銭がチャラリと鳴った。

「お・にぃちゃん、財布出してみ!」

一本下駄のミニダイス君がけつまずきながら、ブリクサに詰め寄った。

「は、はいっ!」

ブリクサは、学生鞄の中から、財布を出すと、その中から、黄金に輝く一万円札10枚を震える手で差し出した。(※ブリクサの家はお金持ちです)

「こ、これどうぞっ……!」

しかし、ミニダイス君は、それを受け取らない。それどころか怒っているようである。

「こんな札束、いらねーよっ!」

ミニダイス君がくわえていた草を吐き捨てながら言った。

「へ!?

「いいから貸してみろっ」

一本下駄のミニダイス君が、ブリクサから財布を奪った。もしや、ブリクサのアリメカン・エキプスレスのゴールドカードが目当てかっ!?(><)

「なんだ、ちゃんとあるじゃにーかっ」

しかし、カードには目もくれず、ミニダイス君2人組は、ジャラジャラと小銭をかき回し、虹色の小銭の中から、黒い硬貨だけを抜き出し、嬉しそうにしている。黒い硬貨、それは、このチャパン国の1円玉である。(※1円玉の価値は、現代と同じです)

1円玉、21枚、いただいていくぜっ!?

……×21枚)

1円玉を抜き出した財布をブリクサに投げて返し、ミニダイス君達は、「へへ、かつあげ成功!」と言いながら角を曲がって行ってしまった。

……

……

……

被害額が僅少の不思議なカツアゲに、いつの間にか、ブリクサも鷹蜜も涙が止まっている。しかし、間髪おかず、また次のミニダイス君二人組がやってきた。二人とも先ほどと同じ一本下駄と草くわえである。

「おぅ、ねーちゃん、金出せや!」

ケロミは、ははぁぁんと感づいた。そして、すぐに、

「はい、わかりましたぁ~」

とリュックの中から愛用のガマ口を取り出した。

「物分かりいいじゃにーかっ」

ケロミは、ガマ口の中から黒い1円玉を抜き取り、ミニダイス君の一人に、

「ミニダイス君、ちょっと手出して」

と言い、素直に出したミニダイス君の合わせた両手の平の上に1円玉を48枚乗せた。

……×48枚)

「うっひょー!こんなに黒いものがっ!」

「もらってくぜっ!ギョケ!」

ほくほくと嬉しそうなミニダイス君二人組は、そのまま去っていった。

「ケロミちゃん、どゆこと?」

ブリクサの質問にケロミは答えた。

「おそらく、ミニダイス君達は、黒くて丸い物が好きなんだよ」

「ケロねぇ、だから、1円玉なんだね」

「そういえば、ピンク色の503円玉や、ターコイズブルーの821円玉には目もくれなかったよね……

(※チャパン国の硬貨は色とりどりで全部素数だよ!計算が大変だね!)

そんな会話をしていると、すぐに別のミニダイス君二人組がやってきた。

「おう、ねーちゃ……

「はいはい、分かりました」

ケロミは、ミニダイス君の言葉を遮り、

「鷹蜜、1円玉出して」

と鷹蜜の小銭入れから、ありったけの1円玉を出させた。

「ケロねぇ、これだけあるよ」

鷹蜜の1円玉は、35枚。

……×35枚)

これを差し出されたミニダイス君の手の平に乗せると、ミニダイス君は、数を数えて、無言で4枚をケロミに返した。

A+B+C=104……D  D100枚=4枚 返金)

「ギョケケケ、これで1円玉をピッタリ100枚もらったぜ……

もう一人のミニダイス君は、

「ねーちゃん達、もう用はないぜっ、失せやがれっ」

と吐き捨てるように言った。

ケロミ達が去りゆく不良のミニダイス君達を見送っていると、横道から別のミニダイス君がピョンと一人現れた。最初のミニダイス君らしい。

「はいっ!『6の目地獄』終了。カツアゲ怖かったでしよ?怖かったよねぇ!?ギョケケケケ……!」

「いや、それほどでも

ケロミのその返答にミニダイス君は、笑うのを止めた。ヘソを曲げたらしい。

「ケロミちゃんは、いつもそんなことを言う!いいもん!今回は序の口だもん!次はもっともっと怖い地獄だからっ」

そう言うと、ミニダイス君は、シュタッとまたケロミのカエル頭巾の上に乗った。

「じゃあ、次は、『5の目地獄』だよ!楽しみだねっ!ギョケケケ!れっつら出発~!」

ケロミは、頭上から、ギョケケケというミニダイス君の笑い声を聞いた。邪悪ではあるが、今や、どこか間抜けさがあるのをケロミは感じとり、少し肩透かしな気分になった。とはいえ、この暗黒六面界は激怒しているダイス君が作った世界……。ミニダイス君の言う通り、これはまだ序の口で、超絶恐怖の数々が待ち受けているの可能性は高い……。どちらにしても、ここから脱け出すためには、ミニダイス君がキーポイントであるのは明確だ。ミニダイス君の導きのまま進まなければ、脱出する手掛かりは……ないっ……

「ケロミちゃん、次はあそこだよ!ギョケ!」

ケロミの頭上のミニダイス君が指を差した。

その場所は、6の目地獄の町を抜けたところ、無彩色の風景の中に伸びる黒い一本道のドンツキだ。そこには、黒い立方体の建物が一棟建っていた。

「あぁ、うん……

ケロミはわざとため息混じりにアンニュイモードで返答してみると、ミニダイス君は、ギョケっと喜んだ。

「まってよ、まってよ、まっててよ~」

そして、例の歌を歌いながらケロミのカエル頭巾の目玉部分をぱむぱむ掴んだ。

両手に弱虫男子、頭上に邪悪(っぽい)男子、をケロミが引率しているようにも見える。ケロミは、いつしか本物のため息を何度もついていた。

そんな状態でしばらく歩くと、目的地の黒い立方体が近づいてきた。その立方体はビルであった。ビルの横には、「西郷商事」と看板が出ている。ビルの正面入り口に着いた一行は、6階建てのビルを見上げた。

「ケロねぇ、これ会社?」

「そのようだね」

ビルの入り口には、張り紙が出ており、そこには、5の目のサイコロの絵と「5の目地獄」と書いてあった。予想通りだ。(=.=)

ケロミの頭上のミニダイス君が、ヒュンと飛び降りてきた。

「はいっ!とーちゃく!ケロミちゃん達は受付に寄ってから来てね。僕は、先に行ってるね!ギョケケケケ!」

そう言い残すと、ミニダイス君はケロミ達を置いて先にビルの中に駆け込んで行ってしまった。

「受付って?」

「中、入ってみようか……

ケロミを先頭にビルの自動ドアから中に入ると受付があった。

オフィスレディのような制服を来たミニダイス君が一人座っていて、ケロミ達を認めると軽く会釈をした。

ケロミは恐る恐る近づくと、オフィスレディなミニダイス君は柔らかい声色で言った。

「シューカツセイの方々ですね?」

ケロミ達は、はじめて聞く単語に狼狽した。

「シューカツセイ?」

「シューっと、カツ臭い?」

「ケロねぇ、それ美味しいの?」

「いや、まずいんじゃね?」

オフィスなレディのミニダイス君は、おしとやかな様子を一変させ、肩を上下に揺らしながら「ギョケケケ」と笑いだした。

「あら失礼。その通りでごじゃいます。ヒッジョーにマッズイのでごじゃるよ。ギョケケ!シューカツセイのおまいらは、ツベコベ言わず555号室の会場にいきやがれ!ギョケ!」

そして、笑うのを止めると元の穏やかな声色に戻り、

……で、ございます。5階の555号室で皆様をお待ちしております」

と言うと、しなやかな手つきでエレベーターを指差した。

「あ、はい。分かりました」

オフィスレディなミニダイス君の威圧感に圧倒され、ケロミは、両手を弱虫男子達に握られながら、黒い立方体のエレベーターに乗った。

5階って言ってたよね……?」

「うん……

2と小3にとっては、会社の中に入るというのは一大事。黒くて四角いエレベーターの中の3人の心臓は既にパックンチョとなっている。

5階に着きエレベーターを降りると、目の前に貼られていたのは、矢印が書かれた紙。その矢印の通りに進んでいくとサイコロの5の目の張り紙がしているドアがあった。

「ケロミちゃん、ここが555号室みたいだよ」

「うん……

ノックしようかと躊躇していると、突然ドアが開いた。

「あっ……!」

「うっ……!」

「えっ……?」

その部屋の中の様子を見たケロミ達の心臓が、ドドンパドンドンと祭り太鼓のように高く大きく鳴り響いた。

★★★暗黒六面界 (4) に続く★★


浅羽容子作『シメさばケロ美の小冒険』第30回、いかがでしたでしょうか?

かつてないダークな世界へ迷い込んだケロミ、そこにいたのは邪悪で恐ろしいミニダイス君……と思いきや、さすがダイス君、邪悪になってもちょっと抜けています。癒しの邪悪。新しいです!とりあえずブリクサ、アリメカン・エキプスレスのブラックカード持ってなくて良かったネ!

チャパン国の黒い1円玉、そして素数円のカラフルな硬貨たちはこちらのタイトル絵にも登場していましたよ。

第23回 S.Sとシメさば家の秘密 (2)
巨大な鯖の姿になって現れたシメさば家の長兄、鯖彦。「純餅喫茶★どくきのこ」で、鯖彦は鯖と化した発端を語り出す……。そして、興奮した兄の思い詰めた行動により、ケロミ(の財布)はピンチに立たされる!

しかし『5の目地獄』は何やらもっと手強そう……!?次回をどうぞ、お楽しみに。

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