第31回 暗黒六面界(4)

このお話は、暗黒六面界(1)(2)(3) の続きです。

555号室のドアが開き、ケロミ達の緊張と恐怖は一気に最高潮に達し、思わず一歩退いた。目の前の部屋の中の光景に圧倒されたのである。その部屋には、何十もの黒い立方体が等間隔に並んで、こちらを向いている。その黒い立方体とは……そう、お察しの通り!ミニダイス君である!全員、ネクタイをしめて黒縁眼鏡をかけて、サラリーマンのようだ。このミニダイス君10人が細長い会議用事務机を前にして横一列に並んで座っている。そして、その後ろにも同じような状態の10人がいて、その後ろにもいて、その後ろの後ろにも……(@@;)。おそらく99人いるのかもしれない。(※100受付嬢1人=99)

サラリーマンなミニダイス君は、どう見ても面接官である。99人の面接官……

そして、その面接官達に対面して、手前にパイプ椅子だけが3つ並べられていた。ぱねぇヤな予感……(> <)

「君達、就活生だね」

最前列の真ん中に座っているミニダイス面接官が黒縁眼鏡の中央を人差し指で上げながら言った。

……いえ、違います」

ケロミは咄嗟に言ったが、ミニダイス面接官は完全無視をした。

「今年の就職は大変らしいね。ウチの西郷商事も就職希望者が大勢来るよ。まぁ、君達、今日の面接は頑張ってくれたまえ」

ミニダイス君はそう言うと、小さく「ギョケ」と呟き、ニヤリと笑った。(ような気がした)

「まぁ、かけたまえ」

最前列右端のミニダイス君がネクタイを触りながら言った。

「あ、え、はい……

ケロミの両腕にかじりつく弱虫男子2人は、離れることが怖いらしく、ケロミと同じ中央の席に椅子取りゲームのように無理やり座った。

「ナニやっとるの?減点になるよ?チミ!ギョケッ!」

2列目のミニダイス面接官が怒気を含んだ声をあげると、他の面接官達も、「ギョケッ!」「ギョケケケ!」と不気味な声を一斉に発した。99人の大合唱は、脳天に響く騒々しさだ。

「わ、分かりました!」

ブリクサと鷹蜜は、急いでケロミから離れ、それぞれ左右の椅子に座った。

「よろしい」

前列中央のミニダイス面接官が言うと、他の面接官達はピタリと黙った。

「では、面接を始めよう。それぞれ自己紹介をしてください。右の鳥頭巾の就活生からどうぞ」

指名された鷹蜜は、おどおどと半泣きのまま立ち上がり、絞り出すような涙声で、

「シメさば鷹蜜です。大正ヶ丘小31組です。いきもも係です」

とだけやっと自己紹介をしてすぐに座ってしまった。

「いきもも係?」

3列目のミニダイス面接官から質問の声が上がった

……はい。クラスで飼っている生きた桃を飼育する係です」

「その桃は黒いのかね?」

4列目のミニダイス面接官が聞いた。

「いえ、ピンクです……

鷹蜜の回答を聞き、ミニダイス面接官達がまた「ギョケ!」「ギョケケケケ!」とざわつき始めた。

「それは、いかん!黒ではなくピンクなんて!君は不合格だ!ギョケケケ!」

前列中央のミニダイス面接官が叫んだ。

早くも不合格となった鷹蜜は、ホッとしたような困ったような顔をして必死に涙が溢れるのをこらえている。

「では、次は、隣のカエル頭巾の女子就活生、自己紹介と、ついでに志望動機も言ってもらおう」

ケロミは、緊張しながらも立ち上がった。

「シメさばケロ美です。昭和ヶ丘中学2157組です。……あ、あと、脂肪どうき?ですか?……うーん、脂肪はダイエットしたので今は普通です」

10列目のミニダイス面接官からすかさず質問がされた。

「志望は、普通だということかね?」

「まぁ、そういうことです。脂肪は普通です」

またもや、ミニダイス面接官達がざわついた。

「なんたること!西郷商事への入社志望動機が普通だと!」

「我が社に入りたいと言う熱意が全く感じられん!」

「カエル女子、不合格!ギョケケケ!」

ケロミも見事不合格となった。鷹蜜は嬉しそうな表情だ。

「では、最後に頭部がジョッキ型の個性的な君、どうぞ」

ブリクサの番だ。ブリクサはササッと立ち上がった。見ると顔が赤くなっている。もしや……(@0@)、そう、ブリクサは、緊張のあまり、自分の涙と頭部から溢れる泡を密かに飲んでいたのだ!アルコール摂取……、未成年のくせに酔っているのである!酔いで気が大きくなったブリクサは、朗々たる声で自己紹介をし出した。

「私の名前は、独逸ブリクサです。昭和ヶ丘中学2157組に在籍しております。私の家は、代々ビール製造業を営んでおります。様々なビールを製造しておりますが、何と言っても一番のオススメはブラックビールです。とにかく色がいい!私は、ブラックビールが世界一美しく美味しいと思っております。ブラックは最高です!」

「ブラックは最高……?」

前列中央のミニダイス君がつぶやくと、部屋に嫌な静けさが漂った。99人のミニダイス面接官達の黒縁眼鏡がキラキラと光り出し、天の川の星のようだ。

「君っ、合格!」

「ギョケー!」

「ギョケケケケケケケケ!」

合格の内定が発令された同時に、部屋の入り口がバタンと開き、大きな黒い立方体を抱えたオフィスレディなミニダイス君が現れた。それと同時に、99人のミニダイス面接官達が立ち上がり、ブリクサの周りに群がった。羽交い締めにして動けなくしている。

「ミニダイス部長、これを」

「うむ」

最前列中央にいたミニダイス面接官が、オフィスレディなミニダイス君から大きな黒い立方体を受け取ると、羽交い締めにされたブリクサのビール型の頭部にズボッとかぶせた。どうやら柔らかい素材でできているようではある。

「はは、新入社員君、大丈夫、息はできるよ」

「ギョケケケケケ!」

解放されたブリクサは、酔いと六面体マスクでフラフラと千鳥足だ。それを見つめる100人のミニダイス君達は一斉に肩を震わせ笑い出した。

「では、新入社員を連れて、次の配置につけっ!」

またもや号令がかかり、部長と呼ばれたミニダイス面接官1人を残し、他の面接官達は、黒い立方体を被せられたブリクサを連れて、またどこかに去ってしまった。

残されたのは、ケロミと鷹蜜、そして、部長のミニダイス面接官1人。

そのミニダイス君は、黒縁眼鏡とネクタイを取り、ケロミを見つめた。(ような気がした)

「ね?ケロミちゃん、『5の目地獄』は怖かったでしょ!?

無邪気な様子でケロミに問いかけるミニダイス君に、ケロミはさすがにムッとした。

「ブリクサをどうしたんだよっ!」

ケロミは、ミニダイス君に詰め寄り、ミニダイス君を持ち上げた。(あ!すごく軽い!?なるへそ、頭上に乗られても大丈夫だったはずだわさ!(00))

「や・やめてよ、ケロミちゃん!暴力は良くないよ!……そんなことをしたら、ギョケッ!……ブリクサが、ギョケどんなことになるか……ギョケケケ……

ミニダイス君のその言葉に、ここでミニダイス君を怒らせるのは得策ではないとケロミは気づき、パッとミニダイス君を離した。

床に尻餅をついたミニダイス君は、恨めしい上目遣い(のような感じ)で漆黒の六面体をケロミに向けた。

……ケロミちゃん、僕を本気で怒らせてしまったね……。容赦はしないよ……。罰として、休憩無しっ!次の地獄もここですることにするよ!ギョケ!」

そして、ミニダイス君がぴゅーと口笛を吹くと、ドアが開き、資料を抱えたオフィスレディなミニダイス君が、入ってきて、

「部長、どうぞ」

と一枚の紙を渡した。ミニダイス君は、それをケロミ達に見せた。その紙には「4の目地獄」の文字と4の目のサイコロの絵。早くも次の地獄がスタートしてしまったようだ。(T T)

「じゃ、ケロミちゃん、『4の目地獄』の恐怖を存分にお楽しみくださいませ!ギョケケケ!」

そう言うと、オフィスレディとともにミニダイス君は悠然と部屋から出ていってしまった。残されたのはケロミと鷹蜜だけだ。

「あーん、ケロねぇ……

恐怖が限界の鷹蜜は、ケロミの胸に顔をうずめて抱きついた。ケロミは、そんな鷹蜜を抱きしめながら、ドアをじっと見つめていると静かにそのドアがゆっくりと開いた。

そして、顔を覗かしたのは、美人山であった!

「え!?なんで美人山が……?」

ケロミの顔がこんな風→(??)になっていると、その美人山の顔の上に、イヌヨさんの顔も現れた、そして、その上には餅代さんの顔がにゅっと現れ……!?

「皆、なんでここに……?」

いや待て……、ケロミよ、冷静になれ……。美人山も餠代さんも小さ過ぎはしないか……

顔だけ出していた美人三人組が、スタスタと中に入ってきた。後ろからなで肩チャパンの美人達も続いて入ってきている。……だが、どこかおかしい……。どれも同じSSサイズなのだ!

……?」

理由はすぐに分かった、美人山もイヌヨさんも皆お面で、ミニダイス君達がそれを被っているだけなのだ。美人面をつけたミニダイス君達はケロミを取り囲んだ。その時、館内放送が鳴り響いた。

「ピンポンパンポーン。『4の目地獄』担当の社員は、これより作業を開始してください」

それと同時に、美人面のミニダイス君達がしなしなと古典的な美人っぽい媚態を取り始めた。クネクネと体をよじらせる美人山のお面のミニダイス君がまず初めに言った。

「ケロミちゃんって、本当に美人ねぇ。私なんてかなわないわぁ」

次に言葉を発したのはイヌヨ面。

「本当、ケロミさんは、本当に美し過ぎて……。そのつぶらな瞳なんて美人の証よ!」

横でうなづいていた餠代面が甘い声を出した。

「そうそう、それに、その丸すぎる顔も類い稀な美女の証だわぁ」

他の美人達も、

「ケロミちゃんのその低すぎる鼻は美の象徴!」

「凹凸のない体型も宇宙一の美しさ!」

と口々にケロミを褒め出した。……そーです……、「4の目地獄」は、「褒め殺し地獄」なのです……!美人達本人から「美人」と褒められる事はただの嫌味、究極の嫌がらせでしかない……

ケロミの表情が次第に雲ってきた。その時、ケロミの視線の中に違和感を感じるお面が入った……。数々の美人面の中に、なぜか発光米先生のお面があるのである。思わずケロミは言ってしまった。

「ん?まいちゃん先生は、感じ良くて可愛らしいけど、美人じゃなくね!?ダイス君の美的感覚おかしいよ」

すると、発光米先生のお面をかぶったミニダイス君が、そのお面を手で押し上げ、黒い六面体の顔を見せてケロミを見て言った。

「だって、この前ドリルさんが僕に『発光米先生って綺麗だよね……』って、こっそり言ったんだよ!」

「あー、はいはい。そういうことね……

少し冷静になり見回してみると、美人面の中に、見習い君のお面もあった。

「見習い君が美人なの!?そりゃ、ないっしょ!」

ケロミが言うと、見習い君面のミニダイス君が、お面を外し反論した。

「見てよ!このエクボ!将来、見習い君は、確実に美人になるよ!」

(※復習見習い君は、大人になって性別を選べる相撲取り族。ちなみに美人山も相撲取り族だYO)

確かに、美人の卵かもしれないが、今はただのいがぐり頭の純朴な少年である。美人もへったくれもない。

そのほか、なぜか、ネ子やウサ子やサニ江のお面もあった。ダイス君の美人の定義は、かなりあやふやである。美人じゃない普通顔の親族に褒め殺されてもダメージがない。逆に、次第にケロミは褒められるのが快感になってきてしまっていた。しかし、「いや、それほどでも……」と照れ初めて、ケロミはハタと気がついた!ダメージがあるフリをしないと、またミニダイス君がヘソを曲げる!

「本当にケロミは絶世の美人!」

母サニ江のお面に言われた。

ケロミは、わざと怪訝な顔をして、

「感じわるっ……!」

と怒鳴ってみた。すると、ミニダイス君が、サニ江のお面を外して、満面の笑み(のように感じられる)で、

「褒め殺し地獄、大成功!」

と持っていたお面を高く放り投げた。すると、他のミニダイス君達も「ギョケケケケケ!」と喜びながら、お面を外し、それらを天井に向かい投げた。幾つもの美人や普通のペラペラした顔が、555号室に舞った。

★★★暗黒六面界 (5) に続く★★


浅羽容子作『シメさばケロ美の小冒険』第31回、いかがでしたでしょうか?
ミニダイス君以外の人も出てきた?と思いきや、お面とは。

名前だけで破壊力抜群、相撲取り族の美人山

第8回 ダイス式ダイエット(2)
ダイエットを決意した餅太りのケロミとダイス君。その矢先に、空の浮遊物体が落下するハプニングに巻き込まれる。しかし、それがダイエットの扉を開く鍵となるのであった……!がんばれ、太っちょ二人組!

クラスの憧れマドンナ、シーズー族のイヌヨ

第15回 あるバイト(4)
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和風個性派、モチ文学の妖精、モチ代

モチモチした味わい、「餅文学」のススメ。餅文学の代表作、「シメさばケロ美の小冒険」の魅力に迫ります。モチ肌モチ代が。誰?

の3人、さらに大勢加わっての褒め殺し、そして圧迫面接。意外と(?)現代っ子な一面を見せる暗黒ミニダイス君。怖いような、怖くないような。美人の定義に至っては、「みんな違って、みんないい」という、ダイス君の美しい心がつい表れてしまった!?

しかし地獄めぐりはまだまだ続く様子ですよ……どうなる!?次回をどうぞお楽しみに。

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