指一本 2/4話(出典:碧巌録第十九則「倶胝指頭禅」)

さて、ここで読者のあなたに質問です。
彼が会得したこの必殺技のポイントは、いったいどこにあるのでしょうか?

「そりゃ、指を立てる仕草にあるんでしょ?」などという理解のレベルでは、もうまるでお話になりません。
しかし、それが指とは関係ないとなると、これはもう全くわけがわかりません。

相手が理解できたならば指を立て、理解できなくても指を立てる。
ハイレベルな質問に対しては指を立て、低レベルな質問に対しても指を立てる。
相手の意見にOKする時には指を立て、NGであっても指を立てる。

こんな話を聞いたことがありませんか?

「たとえチリやホコリのような小さなものであっても、それがたったひとつ舞い上がっただけで世界が統一される。
花がたったひとつでも開こうとする時、そこから世界が始まる。
百獣の王ライオンは、その全身に生えている毛先のひとつひとつまでが、全て百獣の王なのだ。」

徳山和尚は言いましたっけ。

「私ひとりが寒いと感じる時は、全世界が氷河期だ。私ひとりが暑いと感じる時は、全世界が灼熱地獄なのだ!」

さぁ大変だ、全く意味がわからない。(笑)
こりゃいったい、何の話なのでしょうか?
わかっている人にとっては当たり前の話なのですが、わからない人にとっては窒息死しかねないレベルですね。(苦笑)

このテーマに関する私の先輩たちの会話は以下のとおりです。

長慶:「いくら美味しいご馳走だからって、満腹の人の前に置いてもなぁ・・・」

玄沙:「オレ様に向かって指なんか立てやがったら、その場でへし折ってやるぜ!」

玄覚:「玄沙さん! アンタいったい何考えているんですか!」

雲居:「確かに玄沙さんの言うことは乱暴ですね・・・ いったい玄沙さんは倶胝和尚のことをどう思っているのでしょうか?
「いい」というのであれば、なんでまた「指をへし折る」などというのでしょうか?
「よくない」というのであれば、いったい倶胝和尚のどこがよくないと考えているのでしょうか?」

曹山:「倶胝和尚のやっていることはデタラメだ!
ある特定のシチュエーションにおいてうまくいったからといって、そのままのカタチで全部うまくいくわけがないだろう!」

玄覚:「ちょっと待ってくださいよ、曹山さん!
「デタラメだ!」なんて言って、倶胝和尚が悟っていなかったとでも言うのですか?
あの人は臨終の時、「この技のポテンシャルは、まだまだこんなもんじゃないのだ。ああ、私は一生かけても使い尽くせなかったなぁ・・・」と言っていたそうじゃないですか。悟ってもいない人にこんな発言ができるでしょうか!?
曹山さん、いったいなぜ、そんなことをいうのですか!」

私個人の意見ですが、実際のところ、倶胝和尚は決して指を立てはじめた時から完全に悟っていたわけではなかったのだと思います。

そんなアヤフヤなものだったにも関わらず、問答において、彼は指を立てるだけで連戦連勝を続けたのです。

―――――つづく