ひとひらの雪 1/3話(出典:碧巌録第四十二則「龐居士好雪片片」)

龐居士(ほうこじ)という人は、在家(出家していない)の仏教信者でしたが、その到達した境地はプロフェッショナルの禅僧をもはるかに凌ぐものであり、行く先々で皆にとても丁重に扱われていたとのことです。

ある時、彼が著名な禅師のもとから退去することになり、十人の禅僧が見送りにつけられました。

折しもちらつき始めた雪を指さし、龐居士はつぶやきました。
「ああ、いい雪だ! ひとひらひとひらが、それぞれそのふさわしい場所に落ち着いていく・・・ (好雪片片不落別処)」

すかさず、見送りの禅僧のひとりがツッコミを入れます。

「それはいったい、どんなところに落ち着くのですか?」

それを聞いた龐居士は、質問者にビンタをくらわしました。

殴られた禅僧が抗議します。

「い、いきなり何をするんですか!? ちゃんと質問に答えてくださいよ!」

龐居士は言いました。

「オマエ、その程度で「禅」の専門家を名乗ろうなんて、おこがましいにも程があるぞ! エンマ様だって許してはくれまい。」

禅僧は言い返します。

「なんでそうなるんですか!・・・じゃあ、あなたはどうなんですか!?」

龐居士はもう一発ビンタをくれてから、こう言いました。

「ちゃんと眼がついているというのに、まるで見えていない・・・ ちゃんと耳がついているというのに、まるで聞こえていない・・・」

この話を聞いた雪竇(せっちょう)和尚は、ただちにこうコメントしました。

「ダメだよ、そんなんじゃ。ワシなら最初に龐居士が何か言い始めた段階で、雪玉を握ってぶっつけてやるところなんだが。(笑)」

―――――つづく