ひとひらの雪 3/3話(出典:碧巌録第四十二則「龐居士好雪片片」)

雪竇(せっちょう)和尚は、「雪玉を握ってぶっつける」などとコメントしましたが、もうとっくに手遅れだというのは誰の目にも明らかです。

雪竇和尚のコメントを聞いた同僚の慶蔵主(けいぞうす)、さらにこうツッコみました。

「雪玉を握るなんて悠長なことをやっているヒマなどあるもんか!(等汝握雪団、到幾時!)」

賢明な読者の皆さんならもうおわかりかと思いますが、「龐居士が口を開いて何か言おうとした瞬間にビンタする」というのが正解なのです。

雪竇和尚は自分のコメントがすっかり気に入ってしまったようで、「スノーボールをぶっつけろ! スノーボールをぶっつけろ!(雪団打! 雪団打!)」などと歌ったりしていたようですが、まぁ、なんというか、大失敗ですよね。

龐居士はちゃんと言っているではないですか。
「眼がついているのに見えない。耳がついているのに聞こえない。」、と。

眼の玉に雪が降り積もり、 耳の穴にも雪が降り積もる。そして遂に、辺り一面、物音ひとつしない銀世界となるのです。

つまりこれが「見一色辺(視聴覚のすべてが真っ白)」の境地であり、万物が全て平等になった状態です。

これこそまさに普賢菩薩が待ち望んだ世界であり、「打成一片(だじょういっぺん)」とも呼ばれる境地なのです。

・・・なんてことを言ったところで、本当はそんなことを意識することがなくなって(不見一色)、ようやく完成度五十パーセントという感じなんですけれども。

雪竇和尚はさっきの変な歌の後、こんなグチをこぼしていましたっけ。

「眼も耳もスカッと爽やか! ・・・なんてことは、例の青い眼のインド僧(達磨大師のこと)にだって説明することはできないだろうなぁ。」

達磨大師にできないことが、私になんぞできるわけがありませんよね。
とうわけで、この話はこの辺で止めておくことにします。

<ひとひらの雪 完>