降魔表 ~我々は如何にして悪魔の軍団を退けたか by夾山禅師 3/3話(出典:碧巌録 慧芳附刊「夾山無礙禪師降魔表」)

そこで私は精鋭部隊「摩訶般若(大いなる智慧)」を率いて一気に突入しました。

もはや眼はかたちを見ず、耳は音を聞かず、鼻は香りをかがず、舌は味を知らず、身体は触覚がなく、意識はなにものにもとらわれません。

この一心不乱の攻撃を受けて悪魔の軍団は総崩れとなり、あれほど強大であった悪魔六将軍(眼、耳、鼻、舌、身、意)も全員討ち取られました。

我らの掃討作戦は徹底したものです。

敵将「妄想」と「無明」をひっとらえて「智慧」の剣で三つに切り捨て、「煩悩」の工作物を完全に破壊し、「人我(個人の主体としての自我が実在するという考え)」の山を木っ端微塵にし、「痴愛(愚痴と貪愛)」の網を「智」の焔で焼き尽くし、「邪見」のバリケードを「慧」の風で吹き飛ばしました。

するとようやく「三明」の見晴らしが戻ってきて「四智(大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智)」はまどかに満ち、内も外も傷なく一切がカラリと澄みわたりました。

「心」王様は元通り「歓喜」の王座に戻り、「真如」は「解脱」の御殿に帰り、「自性」は「無碍」の御殿でゆったりとくつろぎ、「三身(法身、報身、応身)」は「法空」の座につきました。

それから今に至るまで、法界は静まって永久に俗世間の汚れを受けることなく、みな等しく「生死」の大河を渡りきり、自分の置かれている境遇にグチグチと不平・不満をつのらせることなく、その日その日を精一杯努力して生きる「涅槃(ニルヴァーナ)」の境地に安住しております。

既に悪魔の軍団はこのようにして退きましたこと、ご報告申し上げます。

以 上

<降魔表 ~我々は如何にして悪魔の軍団を退けたか 完>


<漢訳原文>
臣乃部領摩訶。一時齊入。
當爾之時。眼不觀色。耳不聽聲。鼻不嗅香。
舌不了味。身不受觸。意不攀緣。一志向前。
念念不退。倏忽而魔軍大敗。六賊全輸。殺戮無邊。
掃除蕩盡。生擒妄想。活捉無明。
領向涅槃場中。以慧劍斬為三段。煩惱林當時摧折。
人我山化作微塵。癡愛網遭智火焚燒。
邪見林被慧風吹竭。因茲三明再朗。四智重圓。
內外無瑕。廓然清淨。心王坐歡喜之殿。
真如登解脫之樓。自性遊無礙之堂。三身踞法空之座。
從茲法界寧靜。永絕囂塵。共渡生死之河。
齊到菩提之岸。魔軍既退。合具奏聞。