日日是好日 2/6話(出典:碧巌録第六則「雲門十五日」)

霊樹(れいじゅ)和尚のお寺は、もう長いこと首座(しゅそ:修行僧たちのリーダー)席が空席のままでした。リーダーがいないと何かと不便なので、修行僧たちが和尚に誰かを首座に任命してくれるように頼むのですが、和尚はその度に、「お?! たった今、我らのリーダーが生まれたようじゃな。」とか、「お!? 我らのリーダーは着実に修行を重ねているようじゃな。」などと適当なことばかり言ってとりあってくれないのです。

挙句には「おお!我らのリーダーが行脚に出発したぞ!」などととりとめもないことを言い出す始末・・・

そんなこんなで20年以上が経過し、修行僧たちももう半ば諦めていたある日のこと、霊樹和尚は突然立ち上がると言いました。

「鐘を鳴らせ!全員集合じゃ!ついに我らのリーダーが来てくれたぞ!!」

修行僧たちは、とうとう和尚がボケたのだと確信し、暗澹たる気持ちになりましたが、仕方なく言われたとおりに集合し、寺の門を開けてみると、果たしてそこには行脚中の雲門青年が立っていたのでした。

霊樹和尚は彼を招き入れると、永らく空室だった首座室に連れて行ったということです。

また、こんな話もあります。

南漢を建国した劉隠がまだ広州に割拠していた時のことです。

ある日劉隠は、いよいよ兵を興すにあたって、予知能力で知られた霊樹和尚の意見を聞こうと思い、彼の寺を訪れました。

劉隠が和尚の部屋に入ってみると、なんと霊樹和尚は座ったまま死んでいるではありませんか!

劉隠は用事が果たせなかったのでムカついて怒鳴りました。

「おい、お前ら!和尚が病気だったなんて聞いてないぞ!!」

寺の者たちは恐縮しながらも言いました。

「いや、私たちも和尚が病気であるなんて知りませんでした。
というか、あの和尚は今まで病気ひとつしたことがなかったのです・・・
ああ、そういえば、最後に和尚と会った時、「もうじき劉隠がやってくるから、これを渡すように」と頼まれていたのでした。」

寺の者が差し出した小さな箱を開けてみると、中には紙切れが一枚だけ入っており、そこには「ウチのリーダーこそが、全人類のリーダーじゃ!!」と書かれていました。

それを見た劉隠は出兵を取りやめ、首座の雲門を霊樹和尚の後任に取り立てたということです。

―――――つづく