酒カス野郎 1/7話(出典:碧巌録第十一則「黄檗酒糟漢」)

ある日のこと、黄檗(おうばく)和尚は演壇に登ると弟子たちに向かって言いました。

「おいオマエら!
オマエらときたら揃いも揃って酒カス野郎ばっかりだな!
酒を飲むカネがないもんだからその絞りカスをもらって食べて、なんとなく酒臭くなっただけで満足していやがる!
そんなんじゃ一生涯をかけたところでロクなものになれんぞ!!
そもそもこの国には禅の師匠などひとりもおらんのだ!
オマエら、そのことがわかっとるのか!?」

あまりの暴言に弟子のひとりが発言します。

「いやいや師匠、そんなこと言っちゃ国中の師匠たちを敵にまわしますよ!
そもそもあなただって禅の師匠じゃないですか!!」

それを聞いた黄檗和尚は言いました。

「禅がないと言っとるんじゃない。ただ、師匠がおらんのだ!」

・・・さて、黄檗和尚は身長が2m以上もある大男でした。

額にはお釈迦様のような丸い突起があり、生まれた時から既に禅を体得していたといわれています。

ある時、天台山に向かう道すがら、一人の僧と出会いました。

その僧も天台山に行く途中だというので、連れ立って歩きながら色々と楽しく話をしたのですが、その話が合うことといったら、まるでずっと昔からの親友のようでした。

しげしげと彼の顔を見てみましたが、人の心の奥深くまで見通すかのような眼光といい、凛として気高い面持ちといい、かなりの高僧であることは間違いなさそうです。

しばらく行くと、谷川が増水しているところに出くわしました。

ああ、こりゃ水が引くまで渡れないや、と思って黄檗和尚が川のほとりで立ち止まっていると、その僧が言いました。

「さぁ、一緒に渡りましょう!」

えっ!? と思うまもなく、その僧はひょいと着物の裾をまくると、まるで平地を歩くかのように増水した川の上を渡り始めたではありませんか!!

その僧は川の真ん中で立ち止まると、黄檗和尚の方に振り向いて言いました。

「さぁ、あなたも渡ってきなさい、さぁさぁ!!」

黄檗和尚は、その僧をぐっと睨みつけると言いました。

「むうっ、出たな妖怪!! もっと早く気付いていれば、その足をぶった切ってやったものを!!」

僧はそれを聞くとため息をついて言いました。

「ああ、この男は本物だ・・・」

言い終わると同時に、その僧の姿は消えてなくなったということです。

―――――つづく

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