酒カス野郎 5/7話(出典:碧巌録第十一則「黄檗酒糟漢」)

さて、黄檗禅師はある日、演壇に登ると弟子たちにこう言い放ちました。

「牛頭和尚はまことによくしゃべるお方だが、肝心なところがピンボケなのだ。残念!!」

実は当時の著名な禅師たちは、石頭和尚にせよ馬祖和尚にせよ極めてよくしゃべる芸風のお方ばかりなのですが、何故そんな悪口を言うのでしょうか?

また、弟子たちには次のようなことも言ったとのことですが、これも同じ趣旨なのでしょうか?

「この酒カス野郎どもが! 行列を見て一番長いところに並ぶようなマネは今すぐやめろ! 僧侶がそんなのばっかりになったら、もう禅宗はおしまいだぞ!! 世間の物笑いの種になっていることにいい加減気づかんかバカモノ!!」

ちなみにこの「酒カス野郎」とうのは当時(唐代)に人を罵倒する時によく使われた流行語なのです。

だから普通に考えればこれは黄檗和尚ができの悪い弟子たちを罵倒していることになるのですが、これはまぁ、わかる人にはわかるハズですが、ネット上の「釣り」みたいなもので、喰いついてくる人を狙っているのです。

するとたまに命知らずなヤツが引っかかって、「いやいや師匠、そんなこと言っちゃ国中の師匠たちを敵にまわしますよ! そもそもあなただって禅の師匠じゃないですか!!」みたいなことを言ったりするわけです。

その勇気は認めたいところなのですが、そこでちょこっと追撃してやるとオタオタしてまるで対応できないと。

黄檗和尚も黄檗和尚で思わず「禅がないと言っとるんじゃない。ただ、師匠がおらんのだ!」などと自分で答えを言っちゃったりして・・・

さてさてこれはまた、いったいなんの話なのでしょうか?

我ら禅宗は捕まえる時はしっかり捕まえ、逃す時はしっかり逃がすのがお約束です。
同様に殺す時は殺し、活かす時は活かし、弛めるも締めつけるも自由自在です。

私はかつてこういう質問を仲間うちで投げかけたことがあります。

「そもそも禅に「師匠」などという存在があっていいんでしょうかね?」

・・・なんというか、これ以上ないぐらい「丸出し」な質問なのですが、しばらく待ってみてもウンともスンとも返事がないときたものだから呆れたものです。

―――――つづく

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