授業でコール&レスポンス その3

これまでのおしゃべりを聞いてくださっている人は、薄々わかっていることだと思いますが、授業でのコール&レスポンスは、学生たちにとっては自分を振り返る機会になっているようです。

自分が抱えている「思い」と向き合ってみること。これが振り返りの最初の一歩です。
しかし、その「思い」を引っ張り出して(=外在化)、眺めて(=客体化)、必要ならば自分を立て直すこと(=自己の再構築)は、なかなか難しいことです。

ただ、そうした身の構えを作りだすことなら、ブルース詞の作品化を通してできるわけです。授業を通して僕が学生に伝えているのは、この構えを作ることだと言えます。

みなさんは、鏡の中の自分に「おい、調子はどうだい?」と声をかけたことはありますか。
もちろん、それへの返事はありませんね。
でも声をかけてみると、「まあまあさ」という顔がそこに映っていませんか。
そして、思わずニヤリ。するとそいつも向こうで、ニヤリ。

家の人がその様子を見たら「何やってるの? 大丈夫?」と言われそう。
しかし、鏡の自分と向き合っている自分、それに向き合っている自分、そしてまたそれに向き合っている自分と自分(…以下省略)が、「まあまあさ」と思える朝は、悪くないですよね。

そんなふうにして作ったのではないかと思わせる学生のブルースを、もうひとつ紹介します。2010年、立教大学の学生が僕の授業で作った詞です。

「ダメ人間の応援歌」

あれもしたい これもしたい やってみたい でもできない
技術がない 知識がない 時間がない お金がない
できっこない でもやりたい おい 負けるなよ自分

これを歌う時には、「できっこない でもやりたい」をコール&レスポンスで繰り返しました。
そのあとの「負けるなよ自分!」は、「できっこない でもやりたい」を繰り返した分だけ、強く響き渡ります。
先の言葉でいえば、「客体化」を感情で味わっている分だけ、その先の対応や方向の提示がより力強くなる、とでも言えるでしょうか。
この作品は、タイトル通り、自分自身に対する立派な応援歌になっていますね。

教室で200人の学生が「負けるなよ自分!」とシャウトした時には、「できっこない でもやりたい」ことに向かうぞという、200の声がありました。
それにいちばん励まされたのは、この僕かもしれません。
こんな授業、やっぱりやめられませんよね。

コール&レスポンス!


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