卒業生からのコールに応えて―ワクワクの頂きもの

日曜日、久々に卒業生と歓談をした。
彼は、IT関連企業で働く社員。卒業後はベンチャー精神で起業し、一時期はイケイケだったが、好調は続かずに資金も貯蓄も底をついたとのこと。気をとりなおし就職活動をして、現在の会社に入ったという。在学中からバイタリティに溢れた彼だったので、「いかにもA君らしい。相変わらずだな。」と笑顔で彼に言った。

会社で新規事業を立ち上げ、企画を練っているため、大学教育の現場の話を訊きたい。それが、僕に連絡をくれた理由だった。
当たり前だが、2年ぶりで会うA君は精悍な顔になっていた。「先生、変わらないっすね」などと言われると、こちらは複雑な気持ちになる。もちろん、嬉しいことではあるが。

A君とは、2時間ほど昨今の大学業界の話をした。
古い体質の大学ほど学部間の縦割り感が消えず、外に向かって連携しなければならない局面になっても内部でガタガタすることがあるという点。キーパーソンを見つけて仕事の交渉をしても、内部の会議や予算調整の如何で、企画実現には相当の努力と根気が要ること。それでも、「これがイイ」と思った商品・企画は、説得力をもって売り込むべしということ。
気のきいたことはひとつも言えないが、熱心に訊ねてくるA君の質問には自分が見た限りでの現状を伝えた。彼がバッグから出した何件もの企画案書類をチラッと見たが、本当に頭が下がる。

じつはA君とは、彼が在学中にはほとんど交流したことがない。学内外で精力的に活動するA君はとても忙しそうに見えた。こちらは週に2コマだけ出講する非常勤講師で、いわゆるゼミに近いような交流はほとんどない。彼が「まず連絡をとって話を訊きたいと顔が浮かんだのが、佐藤さんなんですよ」と言うのは、とても不思議だった。

ところが話しているうちに、教育というフィールドでどんな「人育て」をしたいのかという点で、似たようなビジョンを持っているということが分かってきた。こうなれば歓談は弾む。こちらも、自分が授業や市民講座で実践している「読むこと」をテーマにしたワークショップや、これまでやってきた地域おこし活動など、たたみかけるように話し伝えた。

しばらくじっと聞いていたA君は、「面白いですね!」と返してきた。どれだけのものを僕がA君に伝えられたかは、心もとない。でも、何かを起こそう、始めようとするところに立ち会っているという感覚は、ワクワクするもの。僕がA 君からもらったのは、この感覚だ。これはとてもありがたい。こうしてA君は、この世界を生きていく仲間のひとりになった。

コール&レスポンス!