50年前に書かれた予言的傑作

『アップル、グーグルが神になる日』(上原昭宏・山路達也 光文社新書)

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アップル、グーグルが神になる日』(上原昭宏・山路達也 光文社新書)を読んだ。
いちおう最後まで読んだ。
13パーセントくらい理解した。それで書く。

世の中には煽りタイトルというのがある。とにかく興味を引く、手に取らせることだけが目的で、内容にまるでそぐわないタイトル。
これもその類かと思ったらそうでもなかった。わりと本気で世界規模のプラットフォーム企業(アップルとグーグルね)があらゆる企業&個人の生殺与奪の権を握るだろうということが書かれている。

つまりBLEとIoTだ。
一見ささいな技術進歩であるBLEによって、巨大なパズルの最後のピースが埋まり、見果てぬ夢IoTがついに実現する!

といっても凄さがわからないだろうか?
わたしもわからない。
が、理解度13パーセントで超圧縮解説してみよう。

ちなみに100パーセント理解したことを説明するのは簡単である。誰でもできる。
13パーセントの理解で説明するのはちょっと難しい。
1パーセントの理解で説明できる人は天才だ。

さて、BLE はBluetooth Low Energy、低消費電力で汎用性が高い無線通信規格。
IoT はInternet of Things、日本語ではモノのインターネット。パソコンやスマホ等の情報端末だけでなく、家電も車も健康医療器具も、とにかくあらゆるものがネットにつながっていくこと。

ほら読者が半分になった。
用語説明なんてもうしない。
飛ばすぞ。

著者は言う。
アップルやグーグルが見ているのは、リアルとネットが融合する未来だと。
現実をそのままトレースしたような仮想現実がクラウド上に構築され、ほぼリアルタイムで更新されていく。
そこにはモノの情報とヒトの情報がある。
それによって、あなたが望むことを、モノが自動的にやってくれるのだ。

もうリモコンとかいらない。
腕時計のような機器から取得されたあなたの体温や脈拍、血糖値等からエアコンが自動的に快適な室温にしてくれる。
カギの閉め忘れを心配することもない。あなたが外出すれば自動的に施錠され、ドアの前まで帰ってきたら自動的に解錠される。
運転免許もいらない。世界中の地図と道路状況を熟知した自動運転車があなたを目的地まで安全に運んでくれる。
不測の事態にもそなえ万全。体調に異変が生じ、あなたの意識がもうろうとなると、車は自動的に行く先を病院に変える。
病院ではあなたがつく30分も前から、異変の詳細分析が始まっていて、到着と同時に最適な処置がとられる。
あなたの家族にも仕事先にも保険会社にもすでに正確な状況が通知されている……。

13パーセントの理解だからね。違うかもしれない。
ほんとはもっともっと凄いことが山ほど起こるのだろう。
本には著者の想像する5年後の世界がかなりしっかり書いてある。
詳しいことはぜひ実際読んでみてほしい。

とにかく、これらを実現するには、一人一人のヒト、一つ一つのモノにまで届く通信網と、膨大な情報を集積したネット上のクラウドが必要で、現在それを持ちうるのは巨大プラットフォーム企業、つまりアップルとグーグルしかない。

この「便利な」世界では、アップル・グーグルのクラウドに接続できないモノは価値がない。自分で運転しなきゃいけない車なんて! 自分で閉めなきゃいけないカギなんて!
こうなるとメーカーは弱いものである。プラットフォーム企業の規格に準拠したモノしか事実上作れない。アップルとグーグルがルールを決め、他企業はライセンス料を払いながらそのルールの中で戦うしかない。

個人もしかり。スマホの位置情報をオンにして自分の居場所を差し出すことによって、道案内を手に入れるように、個人情報を差し出せば差し出すほど、はかってもらえる便宜も大きくなる。人々は先を競って「お布施」をするだろう。そしてある程度以上「便利」になった世界では、自分だけ別の道は選べない。
手で閉めるカギ、自動運転でない車、そんなものはどこにも売っていないのだ。

かくして現代の神が生まれる。

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いやあ理解していないものを要約するのは大変だ。
しかも多分だいぶ間違っている。
それでもあえてやってきたのには理由がある。

『アップル、グーグルが神になる日』は昨年刊行された本だ。
だから今日のタイトル「50年前に書かれた予言的傑作」はもちろんこの本のことではない。

では何か?
ものぐさトミー』である。
これについて書きたくてここまで苦労してきたのだ。

絵本「ものぐさトミー」

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ではまた明日! 乞うご期待!

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