猫の王さま2

時に、猫歴15年AC(「AC」とはAfter Catの事。猫の歴史家により、歴史は書き直され、
人間が支配していた時代は「BC」(Before Cat)と表記されるようになった)。

猫の王さま2 クレーン謙

世は猫が謳歌する時代となった。
人間の町は、取り壊され、猫が暮らしやすいように作り直された。
元々高い所に__登るのが好きだった猫は、次々と高層のキャットタワーを建てた。
しかし、それらの建造を実際に手がけたのは人間達だった。
いくら猫の知能が高くなったとはいえ、やはり人間の方が手先が器用だったので、猫はそこを
利用するしかなかったのだ。

猫に反抗できる人間は誰もいなかった。
猫には人間を操る超能力があったので、猫に従順な奴隷として生きていくしかなかったのだ。

そしてこれも不思議なのだが、あんなに人間を憎んでいたのに、年数を追うごとに猫の文明は次第に人間のそれと似通ってきた。
「全ての猫の平等」を謳っていた王国も、やがて貧富の格差が開いていった。
裕福な猫は多くの奴隷を持ち、キャットタワーの上層階で暮らすようになり、下層の猫たちは
奴隷を持つ事もできず、ネズミが走り回るスラム街へと追いやられた。
(この頃には、ネズミを狩る、という本能は猫から消え失せていた)

本来夜行性の猫だったのだが、文明が進むと共に昼に活動するようになった。
しかしながら、かつての習性も残っていた。
月に一夜、猫達は「集会」と呼ばれる夜会を開き寝食を共にするのだった。
その夜も、王国の宮殿では貴族たちの「集会」が催されていた。

「集会」には着飾った貴族たちが集まり、食卓には、魚のムニエルや七面鳥のパイ包み焼きなど、豪勢な料理が並んでいた。
猫はもう生魚を食す事はなかった。
生の魚を食べるのは、この世で最も野蛮な事だ、と彼らは思っていたのだ。

貴族たちはマタタビ酒のグラスを手に、かつての人間たちとの戦いの事を思い出し、自分たち種族の優位性を確認しあうのだった。
貴族の「集会」にはシャム猫、アビシニアン、ロシアンブルーなどの猫たちがいた。
そう、猫の貴族はみな、元血統書つきの猫だったのだ。

彼らは、自分たちが革命を成功させたと自負しており、自らの純血性を何よりも重んじていた。
貴族などの支配者層は、かれら純血種で占められており、混血種の猫たちを下層民として扱っていた(貴族たちは密かに混血種の猫の事を「雑種」と呼び、見下していた)。

彼ら貴族は、猫が演奏できる楽器を作り、「集会」でその演奏を嗜む事が慣わしとなっていた。
猫の奏でる音は人間が聞き取る事ができる波長よりも2倍も広かったので、おそらく人間には、その音楽を聞き取る事ができなかっただろう。
猫の貴族たちはそれを知り、自分たちが人間よりも勝っている事を誇りにしていたのだった。

・・・・このようにして、猫の王国は栄えていったが、純血種と混血種の猫との間に次第に軋轢が生じてきたのだった。
混血というだけで、混血種の猫は身分が低いままだったのだ。
毛皮をロシアンブルーのように灰色に染めたり、ペルシャ猫のように長く伸ばしたり、苗字を改名したりして、自らの血統を偽る者が次第に現れるようになった。
純血種の猫たちは、それらの猫たちを更に見下すようになった。
時には純血種と混血種の間で争いごとも生じたが、貴族たちは強い兵士たちを従えていたので、それらの争いは容易く鎮圧された。

「猫の王」はそれを知る事もなく、宮殿の展望台から猫の王国の発展を見渡し、誇らしい気持ちで、日々の公務に追われていたのだった。

――――つづく

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