猫の王さま3

猫の貴族達は次第に贅沢な暮らしをするようになり、それとともに、庶民、特に混血種の猫達の生活は苦しくなった。
貴族は庶民から重い税をとりたてるようになり、混血種を上流社会から締め出すような法案まで制定した。
猫の町には、至る所に公衆の「爪研ぎ場」があり、猫の社交場になっているのだが、その「爪研ぎ場」も「純血種」用と「混血種」用に分けられたのだった。
次第に混血種の猫達の不満が高まってきた。

その夜も、スラム街の爪研ぎ場では猫達が集まり、お互いが持っている情報を交換しあっていた・・・・・。

「オイ、きいたか。・・・とうとう我々混血種と純血種の結婚が禁止されたぞ!」
「ああ、知っている。ワシの所の姪っ子はある貴族の子息とつきあってたんだが、いきなり役人がやってきて、姪っ子は逮捕された」
「なんだそれは、ひどいな!」
「いや、もっとひどい話もあるぞ。キャットニップ通りに住むキジトラのレオじいさん、間違って上流階級の爪研ぎ場に入っちまったんだ・・・。どうなったと思う? 純潔至上主義者どもがやってきて、レオじいさん、そいつらに噛み殺されちまった!!」
「なに! あのレオじいさんが? あんな良い猫が?」
「レオじいさんだけじゃないぞ。何もいわれのない罪で我々の仲間の多くが、監獄に収監され、そこで拷問を受けている」
「・・・・そこを、皆で襲撃するって話らしいな?」
「そう。いよいよ、立ち上がる日が来たのだよ。我々は監獄を襲撃して、仲間達を救い出し、そしてその仲間達と一緒に、宮殿も襲撃する」
「武器は?」
「この前、奴隷の人間から、隠し持っていた大量の兵器を譲り受けた。人間も王朝の猫たちを憎んでいたからな。武器は十分にある」
「いつ?」
「きたる、安息日だ。安息日は革命が成功した記念日で、貴族たちも油断をしているだろう・・・!」

このようにして、混血種の猫たちによる、王政打倒の革命が決行される事となった。
安息日の夜、その夜は月もなく猫の町は暗闇に包まれていた。
混血種の猫たちは、監獄を襲撃する為に、息を殺して監獄の周りに集結していた。
混血種のリーダーが一声小さくニャーと鳴き、それが合図となり、監獄襲撃が開始された。
前日にマタタビ酒を飲んで、寝込んでいた看守たちは反撃をする間もなく、混血種たちに倒されていき、またたくまに監獄は占拠され、囚人達は解放された。

猫の王さま3 クレーン謙

勢いを得た革命の戦士達は、人間の作った武器を手に取り、宮殿へと向かっていった。
いくら人間が地に落ちたとはいえ、やはり人間の作った兵器は強力だった。
革命の戦士達は人間の武器を使い、次々と宮殿の大砲を破壊し、宮殿を守る軍隊を倒していった。
寝込みを襲われた宮殿の貴族達は、白旗を掲げ降伏をし、最後に宮殿の展望台にいた王が捕らえられ、革命軍の勝利で戦闘は終結した。
革命軍の猫達は自分達の旗を、宮殿のタワーから振りかざし、ニャーニャーニャーと喜びの雄叫びをあげた。

猫歴17年AC、純潔種の猫達による王政支配は終わりを迎え、替わって混血種の猫達による共和制の国づくりが開始された。
貴族たちは捕らえられ、悪政で名高いロシアンブルーや、税の取り立てで庶民を苦しめたベンガル猫などがギロチンにかけられた。
そして、王は市内引き回しの罰にかけられる為に、独房に収監された。
看守は王政政治を特に憎んでいた三毛猫だった。
看守は王にろくに食べるものも与えなかったので、数週間後には、王の立派な白い毛は抜け落ち、すっかりとやつれ果ててしまった。

――――つづく

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