ワインシュタイン博士の長い一日<4>

動物たちから捧げものを受け取った人間は、その後、大いに発展を遂げた。

頭が良くなった人間は、科学を発展させて、実に様々なものを発明した。
1608年、望遠鏡が発明され、人間は遠くの星々を見る事ができるようになった。
1903年、「燃ゆる水」を使い人間は初めて空を飛んだ。

しかしこの頃には人間は、動物たちとの約束を完全に忘れていた。
時は過ぎ、地上の王者となった人間は地球の隅々まで行きわたり、その数を増やしていった。
人間は町や国を作り、時によっては人間同士で争いもした。

時折、動物たちは何か言いたげに人間の事を見るのだが、「言葉」を無くした彼らは何も言う事はなく、ただひたすら人間の発展を眺めていた。
そして1961年、人間は初の有人宇宙飛行を成し遂げたのだった。

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ワインシュタイン博士は腕組みをしながら、黙ってオウムの話を聞いていた。

「博士、私の話を信じていないね?」
「ああ、信じられんね。まるで子供のおとぎ話じゃないか!」

オウムが窓の外を見ると、空の上にジャガイモのような形をした隕石がはっきりと見えた。
隕石は確かに、確実に地球に向かっているようだった。

「博士、信じようと信じまいと、あの巨大隕石がこちらに向かっているのは事実だよ」
「それは事実のようだな。ところで、君はなぜ私に話しかけたのかね?ワシがあの隕石をなんとかできるとでも?」
「博士、私は30年もあなたの側で、あなたの研究を見ていたんですよ」

ワインシュタインはそれを聞き、苦笑しながら言った。
「ふん!あれの事か?『亜空間転移装置』は失敗作じゃよ。あんなものは何の役にもたたんぞ」
「でも、もしかしたら、それが最後の望みなのかもしれない。なんとか、ならないのかね?」

ワインシュタイン博士は席から立ち上がり、頭をかき回しながら部屋を歩き回った。
そして部屋に置いてある黒板に、なにやら数式を書き始め、言った。

「『亜空間転移装置』はワシの『独特・非一般相対性理論』を元にして作った。
計算どおりであれば、遠くの物質を瞬時にして呼び寄せる事ができるのじゃが、何故だか失敗した。
・・・・この失敗でワシは世間の笑いの的になってしまったのじゃよ。
以来ワシは、気が触れた学者として完全に人々から忘れ去られてしまった。
この装置は結局は物質を呼び寄せる事はできなかったのじゃが、少し改良すれば人工的にブラックホールぐらいは生じさせる事ができるかもしれぬ・・・」

――――続く

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