電気売りのエレン 第16話 by クレーン謙

あたしの名前はレーチェル。
とどろき山のふもとに、お母さんとお兄ちゃんと一緒に住んでる。

でも、お兄ちゃんのエレンは何日か前にいなくなっちゃった。
山で電気が獲れなくなったから、きっと海に電気を獲りにいったんだわ。
お母さんはエレンがいなくなったので、とても悲しんだけど、エレンの事だからきっと、電気をたくさん手に入れて無事に帰ってきてくれると信じている。

そうよ、エレンはおっちょこちょいだけど、とても腕がいい電気売りなの。
だから、きっともう少ししたら「やあやあ、レーチェル!たくさん電気が獲れたよ!」と言いながら家に帰ってくるわ。

エレンがいなくなっちゃったけど、今日もあたしは学校へ行った。
エレンは読み書きができないけど、あたしは毎日学校へ行って読み書きを勉強している。
学校といっても、生徒が15人しかいない、ちっちゃな学校なんだけど。
先生も一人しかいない。

あたし以外は、みんなあたしよりも大きな子ばかりだから、授業が難しくて、先生の話が分かんない時がある。
先生は今日は、あたし達の国の昔の話をしていた。難しい話だったけど、あたしは我慢をして先生の話を聞いていた。

「・・・・・・昔、われわれの国は魔術師が支配していた。もちろん君達が生まれる前の事だ。
その頃は『いにしえの言葉』が信じられていて、魔術師が魔術を使って国を支配していたのだよ。
もう今は居なくなってしまったのだが、昔はドラゴンや妖精がいて、人々と共に暮らしていた。時が過ぎ『いにしえの言葉』は忘れ去られ、力をなくしたドラゴンは、姿を変えて人里離れた山奥に逃げ、妖精達は言葉が喋れぬ電気蛍に姿を変えてしまった、と言われておる」

そうだったのね!
もしかしたら、あたしとエレンが山奥で会った電気ウナギはドラゴンだったのかしら?
先生にその事を聞こうと思ったけど、やめた。
先生は話を続けた。

「『いにしえの言葉』が信じられていた時代、死んだ人間をも魔術を使って蘇らせる事ができた。
しかしそれは、『神』の掟に反していたのだ。魔術師の行いを、神への裏切りだと信じる人々がある日、我々の国に軍隊を送り込み、そして魔術の世界は滅ぼされてしまった。
『いにしえの言葉』が記された書物は焼き払われ、力をなくした魔術師達は国中を彷徨い歩く事になった、と言われている。もちろん、この学校でも『いにしえの言葉』は教える事はない。もう必要のない言葉だし、書物も残っていないからね」

学校が終わって、あたしは友達たちにバイバイと言って家に帰る事にした。
病気のお母さんが心配だったから。
荷物をカバンに詰めて、急いで学校の外に出ると、この村で見た事のない女の子が立っていた。
エレンと同い歳ぐらいかしら?
その子が、あたしを見ると言った。
「あなたレーチェルね?エレンの妹の。お兄さんがあなたの事を待っているわ。一緒に来て」

「エレンが?もう戻ってきてるの?あなたは誰?」
あたしがそう聞くと、その女の子はニコリともしないで答えた。
「わたしは、マーヤ。エレンのお友達よ。エレンは村の外の森にいるわ。一緒に来て」

知らない人に付いていかないように、と言われていたけど、その子も子供だったから付いていく事にした。
マーヤというその子は、歩いている間、何も言わなかった。
なんだか、とても不思議な感じの子。
村を出て、森の中に入ってしばらく歩くと、そこにとても目つきの悪い男達が5人ぐらいいた。
みんな、弓矢やライフルを持っていた。
でもエレンはいなかった。
その中の一人は、灰色のマントを羽織っていて、魔術師が持つような杖を持っていた。
その男があたしを見ると言った。

「おまえがレイか?・・・・いや、レーチェルだね。レーチェル、『光の剣』はどこにある?『クラウ・ソラス』という名の輝く剣だ。おまえがその剣を持っているはずなのだが」

あたしは怖くなって、泣き出してしまった。
「知らないわ!知らないわ!光る剣ってなに?エレンはどこなの?」
あたしは子供だけど、バカじゃない。
「光の剣」というのは、きっとエレンが持っているナイフの事だろうけど、そんな事を言ったら何をされるか分からない。
しばらく泣いたりわめいたりしていると、その男が諦めるようにして言った。

「マーヤ、本当にこんな子が『光の剣士』なのかね?」
マーヤは私の事をジッと睨んで言った。
「そうよ、ゾーラ。夢で見たわ。でもこの子は『光の剣』は持ってないわね」

ゾーラと呼ばれたその男は、持っている杖を使って自分の周りに円を描きながら言った。
「フン、まあいいだろう。その子を使ってフレムをおびき寄せる事もできるからな。フレムの動きが気になるので、俺は一足先に戻るとしよう。マーヤ、その子を連れて港町へ向かうように・・・・」

そしてその男は、今まで聞いた事がないような不思議な言葉をつぶやきだした。
すると風も吹いていないのに、大きなゴーッという音がして、描かれた円の中にいる男が、光りはじめ、そして、男はパッと消えた。
「魔術を使って、港町に行ったのね・・・・」
マーヤがぼそりと言った。

魔術?
するとさっきの男は魔術師だったのね!
マーヤは一緒にいる男達に向かって言った。
「港町に戻りましょう。この子は私たちの人質よ。一緒に連れて帰るわ」

――――続く

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