電気売りのエレン 第17話 by クレーン謙

マーヤと怖そうな男達に囲まれながら、あたしはどんどんと村を離れていった。
・・・・いったいどこへ連れていかれるんだろう?
あたしはベソをかきながら、マーヤに聞いてみた。
「ねえ、あたしをどこに連れていくの?」

マーヤはあたしの事を見もせずに答えた。
「わたしのお父さんの所よ」
「お父さん?マーヤの?どうして?」
マーヤはチラとあたしの方を見て、言った。
「お父さんは約束したの。あなたを連れて帰り、そしてもし一角獣を捕まえる事ができたら、その一角獣をおまえにやるって」
あたしはマーヤが何を言ってるのか、ぜんぜん分からなかった。
「イッカクジュウ?何、それ?そのイッカクジュウとあたしと何の関係があるの?」

「お父さんが、何をしようとしているのか興味ないわ。わたしはただ、一角獣がほしいだけ・・・」
マーヤはようやく、あたしの方に振り向いて、そして話を続けた。
「一角獣はね、それはとても美しい伝説の生き物よ。その体は輝くばかりの白さで、長い角が一本生えていて、その角でどんな病気も治す事ができるの。人の言葉も話す事ができて、空も飛べるのよ!でも、一角獣は子供と若い女の人の前にしか姿を現さない、と言われているわ」

マーヤは、さっきと違って、一角獣の話をしている時には、子供らしい顔つきになっていた。
マーヤはポケットから紙を二枚取り出して、あたしに見せた。
1枚目の紙には、角が生えている馬のような動物の絵が描かれていた。
その馬のまわりには羽が生えた妖精の絵が描かれていた。
「これマーヤが描いたの?すごい上手ね!」

マーヤはようやく笑顔を見せて、言った。
「そうでしょ。わたしは夢で出会った『いにしえの動物』を描くのが好きなの。みんな、とても綺麗でしょ?この馬のような生き物が一角獣よ」
マーヤが笑顔を見せたので、あたしは少しだけ嬉しくなった。
「わたし、とどろき山で妖精を見たわ!でも、みんなホタルに姿を変えていたけど・・・・」

マーヤが目を輝かせた。
「まあ!ここには妖精が住んでいるのね!素敵!」
マーヤは2枚目の紙をあたしに見せた。
そこには、体が半分魚の女の人の絵が描いてあった。

「あ、知ってるわ。これ人魚でしょ?お話の中に出てくる」
あたしがそう言うと、マーヤは少しムスッとした。
「人魚は本当にいるのよ!お話の中だけじゃないわ!」

そのように言うとマーヤは、また元の冷たい顔つきに戻ってしまった。
「『いにしえの動物』はとても美しくて正直。・・・・・・わたし、この世界が大嫌い。
人間たちは嘘ばかり言うし、争ってばかり。一角獣や妖精や人魚に比べれば、人間はなんて醜いのかしら」
そのように言うと、マーヤは再び黙り込んでしまった。
少しだけ、お友達になれたと思ったのに・・・・。
怖い男たちが「早く歩け」という目の合図を送ってきたので、あたしはまた泣きそうになりながら歩き始めた。
お母さんは、あたしがいなくなったので、きっと心配をしているわ。
そう思うと、目から涙がこぼれ落ちてきた。

お空を見上げると、とても綺麗な青空だった。
あたしは小さい声でマーヤに聞いてみた。
「・・・・・・ねえ、マーヤはこの世界が嫌いなの?あの空を見てどう思うの?」

マーヤは空を見上げて、
「・・・・青いわね。それがどうしたの?」とだけ答えた。
そして、あたしの方に向いて言った。

「あなたのお兄さん、エレンは今、海にいるわね。エレンは海で人魚に会うわ。・・・夢で見たのよ」

――――続く

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