たかしまてつを個展「千鳥描き」(2018.1)


[プロフィール]

たかしまてつを
1967年愛知県生まれ。画家/イラストレーター。

1999年ボローニャ国際絵本原画展入選、2005年ほぼ日マンガ大賞受賞、
2005年二科展デザイン部イラストレーション部門特選賞を受賞。

主な作品に『ブタフィーヌさん』(ほぼ日)、『ねこはいじん』(KADOKAWA) がある。イラストを担当した『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』(幻冬舎)はミリオンセラーとなった。赤ちゃん向け絵本『とりがいるよ』『たまごがあるよ』(KADOKAWA)では絵を担当。漫画を担当したコミックエッセイ『40歳からのハローギター』(幻冬舎)も人気。

2016年に大磯でギャラリーカフェ「At GALLERY N’CAFE」をオープン。

たかしまてつをHP
At GALLERY N’CAFE

    
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[好きなホテル]

よこお荘 です。
思い出深い伊豆の民宿です。大学時代の空手部合宿で毎年お世話になり、空手部仲間と一生酒の肴にできるほどの思い出をたくさんつくりました」

※「空中庭園」で全7回の たかしまてつをさんインタビュー がお読みいただけます!


【とりかえし】

なに? 鳥がどうしたって?
聞こえているくせに、わざと彼は聞き返す。
強く、大きく、少し刺をくわえた声で。
はあ? とりかえし?
吐き捨てるように彼は言い、
いつもの腹立たしい表情をつくる。
目を閉じ、眉毛は八の字に、
鼻をふくらませ、片方の口角だけ上げる。
とりかえしがつくようになんて考えてて、
面白いもんつくれると思ってんの?
一転、眼力を誇示するかのような
険しい顔に変化した彼が、
低く唸るような声で責める。
彼はあたりめをひと裂きくわえて
自分のグラスになみなみとビールを注いだ。
そして、さもついでかのような動作で
ぼくのグラスのわずかな空きも埋めた。

【いのちとり】

じゃあさ、最後にひとつだけ
好きなことやらせてやるよ。
そう死神は言いました。
真っ黒な布を頭からすっぽり纏っていて、
真っ白な髑髏だけがボウッと光っている。
例の大きな鎌は持っていない。
じゃあどうやって殺すのかな。
好きなこと…死ぬ前にやりたいこと…
とっさにそんなの出て来ません。
ならばせめて死ぬのが怖くないよう
酒をたらふく飲んで泥酔したい。
そう死神に伝えました。
果たして
酔いから覚めて気が付いたときには
ぼくは既に死んでいました。
霊体的なものになったぼくの足下に
真っ青なぼくの身体が転がっています。
死因は急性アルコール中毒だよ。
死神がニヤニヤしながら言いました。
好きなことが命取りになった格好です。
なかなか粋な殺し方をするもんだと
変に死神に感心しながら、
ぼくはボウッと光る髑髏の中へ
吸い込まれて行ったのです。


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