可能性ゴッドファーザー

このお話は、ホテル暴風雨の庭園に生えてきた新種の植物のお話です。
絵とお話「伝説の羊の木」
マンガ「何が見えますか?」
絵とお話「はじめまして、お名前は?」
絵とお話「大きな大きな莢」
マンガ「メエサクさんと豆」
絵とお話「思い出のヒツジガリ」
絵とお話「あなたの色に染まる豆」
絵とお話「美味に毒なし」
マンガ「誇り高き美食家たち」

などを先にお読みになると、よりお楽しみいただけます。では、はじまり、はじまり〜♪

みなさま、こんにちは。ホテル暴風雨フロント係のメエサクです。

私、今日はお休みの日なのですが、朝からもう忙しくて忙しくて……

ピンポ〜ン♪
こんにちは〜

ウルミ

メエサク:「やあ、ウルミさん、いらっしゃい!例のもの、持ってきてくれた?」

ウルミ:「もちろん。マメ用クッション追加分、持ってきたよ」

メエサク:「ありがとう!悪いね、ここまで来てもらっちゃって。でも助かった〜」

ウルミ:「今日はお客様も少ないし休憩長いから大丈夫なんだけど、それよりメエサクさん、壁にマメのツルがつたってるし、床はマメ色だし、すごいことになってるね」

メエサク:「えっ?床は前からだよ。草原みたいなイメージにしたかったから、草色のフカフカのカーペット。でもちょうどマメ色でいい感じだよ」

ウルミ:「なんか、ベッドがマメに占領されてるけど、大丈夫?」

メエサク:「大丈夫だよ〜、夜はマメに添い寝してるからね」

ウルミ:「あの〜、メエサクさんが触ったマメだけが発芽するみたいだからって、アルブルさんからこのマメを預かったんでしょう?」

メエサク:「うん、そうだよ」

ウルミ:「じゃあ、マメに触って、部屋に置いとくだけでもいいんじゃない?」

メエサク:「何言ってるの、マメを育てるには愛情と真心だよ!」

ウルミ:「…………そ、そうなんだ。この豆の木は『可能性の木』だっていう説もあったけれど、やっぱり羊の豆の木だったみたいだね」

メエサク:「そうかな?僕は、可能性の木だったと思ってるよ」

ウルミ:「どういうこと?」

メエサク:「これは羊の木だ!羊の木だ!って、誰よりも強く念じてたからね。ちょっと寝不足になっちゃったよ」

ウルミ:「そんなにしてまで……?」

メエサク:「だって今さら別の動物が出てきてもつまらないし、誰か強欲な人が、ダイヤモンドの木だとかレアメタルの木だとかになれって念じたら大変だし」

ウルミ:「うーん、別にそれはそれでいいような気も……まあでも、この新種の木の名前はやっぱり『羊豆』にしようかなって、ラウさんとアルブルさんも言ってたよ」

メエサク:「それは名案だね!なんなら、メエサク豆でもいいんだけど」

ウルミ:「クッションは色違いにってリクエストだったけど、やっぱり色を変えないと豆の区別がつかなくなるから?」

メエサク:「話題変えたね……いやいや、そんなわけないよ、これがマメコでしょ、こっちがマメノスケでしょ、みんなこんなに個性的じゃない」

ウルミ:「えっ?全然区別つかないんだけど」

メエサク:「ウルミさんには無理かもねえ〜、ヒツジってほら、没個性でみんな同じに見えるっていうけど、豆もわりとそうだよね。ダイヤモンドとかの重さを測る『カラット』っていう単位も、一個一個の重さが均一な『カラット豆』から来てるし、あとそれからね、『レンズ豆』ってあるでしょ、あれ、レンズみたいな形だからレンズ豆だって思ってない?」

ウルミ:「思ってた。違うの?」

メエサク:「逆なんだよ。レンズ豆みたいな形だから、レンズって名前になったんだよ」

ウルミ:「へえ〜!!知らなかった!メエサクさん、意外と物知りだよね」

メエサク:「えへへへ。マメだけに豆知識。脱線したけど、『埋没』を趣味とする僕には、他の人には個性のわかりづらいマメの世話はぴったりの仕事だよ。忙しいけど」

ウルミ:「ところで、スタッフ有志の豆試食会が開かれるって噂になってるけど……」

メエサク:「楽しみだよね〜、もともと豆って美味しいのが多いけど、このマメは特別美味しいと思うんだ!」

ウルミ:「あ、食べちゃうのはいいんだ……」

メエサク:「美味しく食べられてこそ繁栄するというのも、植物の戦略のひとつだからね。超美味しければ、チヨさんもジュロウシェフもどんどん植えようって言い出すだろうし」

ウルミ:「なるほど、意外と冷静……将棋で鍛えてるから?何だか、端々に狂気を感じなくもないけど、このマメが増えれば私も毛糸の材料が手軽に入って嬉しいな」

メエサク:「ほーら、メエサク豆になったおかげで三方一両得でしょ!」

ウルミ:「羊豆だから」

ウルミさん、細かいんだからなあ。
いずれにせよ、私の育てたマメたちがいずれ大木になってまたたくさんのマメを実らせてくれるのが楽しみです。ホテル暴風雨の名物になって、マメの木もホテルのシンボルツリーになるともっといいですね。メエサクでした。


ホテル暴風雨ではみなさまからのお便りをお待ちしております!

「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!暴風雨ロゴ黒*背景白


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