秘密の小箱

みなさま、お久しぶり。
ホテル暴風雨海中顧問、クラーラよ!

しばらくホテルを離れて旅をして帰ってきたら、豆が大流行りだっていうじゃない?
最初は何のことだかわからなかったけれど、実物を見て納得しました。この「羊豆」、大きくて見た目も面白いけれど、この綿毛がとにかくいいのよね。羊毛にそっくりだけれど、水中でも失われない保温性は羊毛以上。期待の新素材じゃないかしら。

そんなことよりわたくし、すっかり仲良くさせていただいているアルバート様が、なんだか沈んだご様子なのが気になっています。この豆を使って驚かせ元気づけて差し上げないと。

みなさまこんにちは。お忘れかとは存じますが、海中客室係兼クラーラ様の従者、フランシスコでございます。

フランシスコ:「クラーラ様、本当に私たちもこの豆の莢をかぶるので?」

クラーラ:「そうよ、嬉しいでしょ♪さ、行くわよ」

うふふ、折良く海中階のお部屋に戻っていらっしゃるようね。こんにちは!……あらら?この海中豆生物の群れを見ても眉ひとつ動かさないなんて、さすがアルバート様ね!ていうか、全然見てない!何か考え事でもされているようだけれど……

クラーラ:「アルバート様、おひさしぶり!何をしていらっしゃるの?」

アルバート:「おや、クラーラさんでしたか。お久しぶりです。今日、奇妙な手紙が届いたんですよ」

クラーラ:「あら、どなたから?」

アルバート:「それが、自分からなんです。こちらのホテルの封筒を使っているのですが、全然身に覚えがありませんで。しかもその中に入っていたものが不思議なんです」

クラーラ:「探していたものが入っていたとか?」

アルバート:「どうしてわかるんです!?実は私、事情があってそろそろ帰らなくてはいけないもので、荷造りをしていました。以前から探していたものが、荷物を総ざらえすれば見つかると期待していたのですが、やはり見つからず困っていたんです。そうしたら自分の名前で送られてきたという次第でして。一体これは、どういうことなんでしょう?」

クラーラ:「お帰りになってしまうの?寂しくなりますわね」

アルバート:「私も寂しいですが、また必ず来たいと思っています」

クラーラ:「そうですね、またきっとすぐにお会いできますね。ところで、何が送られてきたのか、伺ってもよろしいのかしら?」

アルバート:「鍵です。小さな、文箱のような箱の。人にもらった記念の品なもので、何を入れるわけでもなく大切にしていまして、この旅にも持ってきていました。その鍵をここへきてから無くしてしまい、ずっと探していたのです」

クラーラ:「その箱、鍵はかかっていたのですか?開けてみましたか?」

アルバート:「ええ、鍵を開けてみましたが、やはり何も入ってはいませんでした」

クラーラ:「ここは時間の進みがほかと違っていることがありますから、きっと少しずれてしまったのね。誰かのいたずらということもなくはありませんが、正真正銘、アルバート様がお送りになったものという可能性が高いかと思いますよ」

アルバート:「どういうことですか?まさか、未来の自分からの手紙ということでしょうか」

クラーラ:「それは受け止め方次第ですけれど……時間なんて意外と、いいかげんなものでしょう。そうはお思いになりません?」

アルバート:「楽しい時間は早く過ぎ、かと思えば苦痛は永遠のように感じられる、という意味ならば、わかりますが。時間がねじれてここへ届いたのならば、この手紙、どうしたらいいのでしょう」

クラーラ:「そうですね、もう一度鍵を入れてご自分宛にお送りになってはいかが?そのまま箱には何も入れなくてもいいし、きっと大切なものを入れて、鍵をかけてもいいんだと思いますよ」

アルバート:「なるほど……今の私には何かと示唆深いアドバイスです、ありがとうございます。うわあ!な、なんですかその豆は!?

クラーラ:「あら、今頃お気づきになったのね……」

未来からなのか、どこからなのか、お手紙の秘密はよくわかりませんけれど、まるでこのホテルがアルバート様を引き止めようとしているみたい。わたくしは、ご決心のままお帰りになって、ご自分のすべきことをなさって、また戻ってくださる方が嬉しいけれどね。長くかかったとしてもわたくしにとっては短い間に違いないですし。ふふふふふ。どうなってしまうのかしら?みなさまどう思われますか。クラーラでした。

長期滞在したアルバートさんがいよいよ帰ってしまう!?詳しくはこちらを。

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