占いの箱庭

占いは好きですか

今、うちにはこんな雑誌がある。

「anan 2018年後半、あなたの恋と運命」
人気雑誌の占い特集号だ。

質問に自分で答えると、私はそれほど占いが好きではない。信じるかどうかと聞かれたら、信じない。「いいことだけ適当に信じておく」程度にも信じない。かといって嫌いでもなく、友人同士で「私は**占いで〇〇だから××な性格だ」という申告に対して当たってるだの当たってないだのと大騒ぎして楽しむくらいの素養はあるし、信じないけど面白いという距離感は好みだ。なぜ人は占いを求めるのか、にも多少興味がある。

ではこの雑誌は研究のために買ったかというとそうではなく、とあるコンテンツを私に読ませるために友人がくれたのだ。それが面白かったという話は別の機会に回すとして、久々にめくるめく占いの世界を垣間見て、思うところがあったのでそのことを書きたい。

占いは未来を教えてくれる?

さて占い雑誌を手に取る。私は「獅子座」の生まれだが(ところで「へびつかい座」を入れて十三星座にするって話があったけれどその後どうなったんでしょう?)、星占いを「獅子座」の項目から見たりはしない。最初から通して読んで楽しむ派である。さらに興が乗れば「今日は何座になろうかな」などと考える。

しかし今回、なかなか興が乗らなかった。興は乗らないが、なぜ今まで気づかなかったのだろうということに気づいてしまった。

「全体運」を見れば、健康、病気、家族、レジャー、バカンス、女子会、SNS、など

「仕事運」を見れば、転職、昇給、スキルアップ、セミナーや勉強会への参加、など

「恋愛運」を見れば、出会い、別れ、アプローチ、同棲、入籍、

などのワードが並ぶ。

それがどうした普通じゃないかと言われそうだ。

何が言いたいかというと、占いは未来を知るためのものだと思っていたが、果たしてそうなのか?と気になってきたのだ。むしろ、「近過去から現在にかけて」世の中に起こっていることを列挙し、並べ替えているのではないだろうか。決まったパーツだけで作られた箱庭のようだという印象だ。

雑誌のターゲット層である30歳前後の女性に、近過去から現在にかけて起こったこととはどんなことか、の捉え方が、占い師によってだいぶ違うのは、それはそれで興味深い(何種類もの占いが載っているので)。

もちろん、「今年のラッキー犯罪はフィッシング詐欺です。絶対バレない運気なので是非チャレンジしましょう」などと書いたら、修正を要請されるに決まっているので、編集部の考えも投影されていようが、基本的には占い師の考えで「近過去から現在にかけて30前後の女性によく起こること」が選ばれ、シャッフルされた後、再配分されている。

つまり、「これまで人の世に起こってきたのと同じことが、トランプゲームのカードを配り直すようにして再配分されるはずだ。では、あなたにはこれからどのカードが配られるかを教えます」という趣旨で作られている。

でも、それでいいの?

占いは統計だというが、占いも統計も、人類史上「初」に起こることは予測できるのか

古来から人は未来を知ろうとしてきた。
本当にそうなのかあまり深く考えず書いているが、きっとそうじゃないんだろうか。

多くの国に占いという文化がある。

かつて天体の運行を研究する天文学と占星術は不可分のものだったというし、今では「占い」「まじない」の一種に見える陰陽道も、昔は最先端の学問であり、この世界を理解し制御する手法だったらしい。つまりは今の「科学」の位置づけだ。

占いとは統計だという言い方もよく聞く。「こういう顔をした人や手のシワがこういう形の人はこういう性格である確率が高い」とか「こういう星の動きの時は世の中でこんなことが起こる」というデータの蓄積。気圧配置や大気の温度・動きで未来の天気を予測する「天気予報」と、大雑把には似たような手法だ。

統計学や確率論というものが、その興りからしてギャンブル必勝法の研究を推進力にして発展してきたとも聞く。ルールが複雑だったり、競馬における「馬の能力」などの要素が入ると難しいが、例えば「ブラックジャック」などは、ディーラー側の作為が介入しないと仮定すれば、「期待値を最大化する賭け方」がギャンブルや数学の専門家でなくても簡単に計算できてしまうのがその成果なのだろう。

だが、現代人が今でも統計学の原型を占いに求めるだろうか?

「これだけ科学が発展した現代でも占いがなくならないのは、人が不安や生きづらさを抱えているからだ」という説がある。言われるとそんな気もするが、不安や生きづらさならどんな時代もあっただろうし、だいたい、現代において不安を解消するのになぜ科学ではダメなんだろう。昔の「占星術」や「陰陽道」と同じポジションのものなのに?

いつの時代もあったような「不安」はさておき、現代がかつてよりより多くの不安を抱えているとしたら、それは、自分や世の中の行く末を、これまでの経緯や過去の例に照らし、論理的に考えても「わからない」度合いが強い、変化の速い時代だからではないのだろうか。

というわけでやっと本題だ。

昨日まで起こっていたことが明日も起こるとは限らないから。
昨年まで通用していたルールが今年はもう通用しないかもしれないから。
だから不安。

現代の不安には、こうした成分が多いと思う。これまでに起こったのと同じことが、「人」や「場所」を取り替えてまた起こる保証なんかない。誰もが通る道、モデルケースのような人生なんてもうない。若い人ほど自然とそう感じる割合は高いだろう。

「同じような属性を持つ人たちの間で配られたカードが、回収されてまた再配分される」方式の占いは、安定した世の中にこそフィットするもので、現代には合わないのではないか。

人間の生物としての造りは有史以来そう変わっていないから、生きるのか死ぬのか健康なのか「喜怒哀楽」のどれが喚起されるか、などに関しては、決まったカード再配分予測方式の占いでもいいかもしれない。

だが私だったら、これまでに起こったことのないようなことが起こるのが不安でもあり、楽しみでもある。「死」も含め、決まり切ったものの再配分がいつ来るかも当然、人生の重要要素であって気になりはする。が、たぶん最重要ではない。だから、信じる信じないはさておいても、雑誌の占いをワクワク楽しめないのかもしれない。

むろん、すごく売れている人気雑誌に載せる占いであり、不特定多数が読むのだから、「最小公倍数的なよくあるカード」の再配分型に絞るメリットはわかる。

これが対面式の占いならば、占いに使う「材料」(星座とか)は同じでも、その人に即した解釈をするだろう。人気の占い師とは、占いの解釈そのものだけでなく、パフォーマンスや話が面白かったり、観察力や共感力に非常に優れて、聞き上手だったりカウンセラー的な才能があったりするのだと思う。

ともあれ、現代の占いに求められるのは、「今はあの人やこの人に配られているカード(運)が、次はいつ私のところに来る?」ではなく、「かつてないことが起こりそうだがいつどんなことが起こるんだろう?」というモヤモヤへのアンサーやアドバイスではないだろうか。

さて、では、統計や占いとはもともと、未知の事態を予測するのに有効なツールなのか。
どうも違うような気がする。天気予報だって、過去30年の観測値を平均し「平年並み」とは何かという基準を設ける。あまり昔の数値は「今と違う」から参考にならないということだ。統計を用いての予測は、「大きく見れば同じ傾向が続く見込みの事象」や「仕組みは普遍的で変わらないがランダムな変動のある事象」などに対してより有効なのではないか。

ツールがないよりあったほうがいいかもしれないが、どうしたらいいのだろう。

過去の「これまでにない変化」、例えば産業革命前後の占い師たちは時代をどう占ったんだろう。その時の「星」などに兆候は表れていたのか。未来ならば例えばAIが人間を超えた後の世界を統計からどう予測するのか。

仮に「星占い」に限定しても、今後の世の中を占うには、変化のスピードが加速してきた「直近の過去」に起こったことを星の動きと対応させ、その延長を占うのが良いのか、それともいっそもっと遡り、「カンブリア爆発」「恐竜絶滅」「ネアンデルタール人絶滅」などの時代の天体運行を詳しく研究するのが良いのか、考え始めると難しい。

「占いは統計だ」という物言いは、占いにはちゃんと根拠と過去の実績があるから当たるのだという文脈で出てきがちだが、むしろこれまでの統計のあり方とは違う占いの方が現代にはマッチする気がしてならない。過去を分解して組み立て直す式ではなく、「未知が来る」式未来観を持つ占い師はどう考えるのか、ちょっと興味がわく。

新しい占いをウォッチしたい。期待を込めて

「an・an」という雑誌は、一般社団法人日本雑誌協会によれば印刷証明付発行部数は165,633部(2016〜2017年の算定)。「超売れてる雑誌」の部類であることに間違いはない(なぜこんな半端な部数なんだろう。毎回違う部数を平均したから?)が、2011〜2012だと20万部を超えていたとのことなので(Wikipediaより)、やはり今雑誌が売れないとの噂は本当なんだと実感する。

だが、久しぶりに手に取った「an・an」は、読むところが多く意外と面白かった。加えて、定期的に占いを特集するくらいだから、かつてない時代を占う、かつてない占い師が登場するかもしれない。売上増に繋がるだろうし、そういう存在が待たれているのは間違いない。これは時々チェックするべきだろうか。

占いの世界も知らないうちに随分変化している。雑誌の占い、直接対面しての占いの他、電話で占ったりメールで占ったりするのもあるらしい。

LINEで占うとかいうのもあるんだろうか。「今日の運勢は?」って聞くと「吉」ってスタンプだけ返ってくるとか。複数のスタンプが返ってきて、それを自分で組み立てて解釈するとか。面白いかどうかはよくわからない。

新しい占いや新しい手法を発明した人も、雑誌に寄稿したりお店を構えたり辻に立ったりするだけではない時代だ。webサイトで占いの手法や「雑誌の占い」的なライトなものを公開して直接鑑定の依頼を受けるやり方は随分前からあるらしいが、近頃は自分の持つ「技術」(web制作やライティング、スキルを教えるレッスンなど多種多様)をフリーマーケット感覚で売れるサイト(こんなの coconala.com とか)で、占いの依頼を受けるやり方もある。

未来を知りたいという欲求が確率や統計を、錬金術が化学を発展させたというのだから、全く新しい占いが、科学の新分野や新機軸を連れてくることだってあり得る。統計解析に新しい手法をもたらし、科学を背負って立つ占い師。すごく面白い。

そう考えると楽しみだ。


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