光るあしあと 第3話

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夢を見ているような気分のまま、おじいちゃんとぼくは歩きまわりました。
学校にも、神社にも行ってみました。
どこも光でいっぱいです。
町外れの川のほとりに行きました。そんなところでさえ、かがやいていました。
初めのおどろきはいつのまにかうすれて、ぼくは、はしゃぎだしました。
「すごい。すごいぞーっ」
色とりどりの光の中で跳びはねました。
おじいちゃんがしゃがみこんでいるのに気づいたのはそのときでした。
「どうしたの、おじいちゃん?」
のぞきこんで、びっくりしました。おじいちゃんは泣いていたのです。
「だいじょうぶ?」
おじいちゃんは、うんうんとうなずいて、くしゃくしゃのハンカチで涙をふいてから立ち上がり、ぼくの背中に手をまわして言いました。
「まさや、よく見ておきなさい。しっかり覚えておくんだ。おまえが世界中のどこにいても、そこは、ほら、こんなにたくさんの足がふみしめた場所なんだよ。
大昔からたくさんの人間や動物が、通ったり、ひとやすみしたりしてきた、そこに、おまえは立ってるんだ」
ぼくは足もとを見ました。いっぱいのあしあとが、たがいに重なりあって光っていました。小さなもの、大きなもの、丸いもの、細長いもの。いつだれがつけたあしあとかはわかりません。でも、いつか、だれかが、ここに立っていたのです。
(さかなつりのおじさん、白いイヌとさんぽする女の子、ねむそうなガマガエル、小さなバッタ。そして昔には……江戸時代にはおさむらいさん、一億年前には恐竜だってここに立ってたかもしれない)
なんだか、胸がどきどきしてきました。あちらからこちらから、だれかのささやき声が聞こえてくるような気がしました。

あのとき、おじいちゃんがなぜ泣いたか、わかるようになったのは何年もたってからです。
おじいちゃんは、ぼくを引きとってからずっと、いつかぼくが一人になるのを心配してくれていたのでしょう。
でも、あの光るあしあとにつつまれた中で、おじいちゃんは感じたのです。
だれも本当に一人っきりになったりはしないってことを。
一人っきりのように見えても、ときを超えて、多くの者に見守られていることを。
そして、それをぼくに伝えてくれたのです。
ぼくが高校生のとき、おじいちゃんは亡くなりました。それからいろいろありましたが、あの夜のふしぎな気持ちを、忘れたことはありません。
四月からぼくは小学校の先生になります。

――――おわり

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