将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第4回

カズオは兄のシュウイチに相談した。
「なに、こども将棋大会? 出ればいいじゃないか」
「でも、知らない子ばかりのチームなんだ」
「ちょうどいいよ。カズオまだ近所に友達いないだろ? こういうのもいい機会だ。ぜひ出ろ。それに団体戦だって? 団体戦はおもしろいぞぉ」

シュウイチは大学の将棋部で活躍している。団体戦の経験も豊富だ。
「団体戦は個人戦と違って自分の力がすべてじゃない。自分が負けても仲間が勝ってくれれば助かるんだ。そのかわり仲間が負けたときはぜったい勝たなきゃいけない。このプレッシャーこそ、団体戦の醍醐味だな。みんなの期待が一身に集まってくる。二勝二敗で自分の勝負だけ残ったときなんて、もう、こたえられないぞ」
将棋の話になるとシュウイチはがぜん目が輝いてくる。中学時代から参加してきた数々の大会でのうれしかったこと、悔しかったこと、さまざまな体験談を熱っぽく語る。そんな兄の話を聞くのが、カズオは好きだ。

シュウイチとカズオは兄弟だが血はつながっていない。二年前にシュウイチのお父さんとカズオのお母さんが再婚したのだ。シュウイチを生んだお母さんは亡くなっていて、カズオの前のお父さんは離婚後は外国で暮らしている。
いっしょに暮らし始めてまもないころ、シュウイチは、
「カズオくん、将棋やらないかい?」
と誘った。そして、カズオがぜんぜん将棋ができないと知ると、コマの並べ方、動かし方から、一つ一つていねいに教えた。初めは気乗りしないようすだったカズオも、いつのまにやら将棋の魅力にとりつかれて、熱心な生徒になった。だんだんと将棋の力がついてくるころには、新しい家族との生活にもだいぶなじめるようになっていた。

たまたま二人ともほそ顔で、色が白いので、歳が離れていることをのぞけば、ふつうの兄弟らしくないところはまず見当たらない。
もちろん今ではシュウイチは「くん」などつけず「おい、カズオ、将棋やるか?」と言う。

カズオはやっぱり大会に出ることに決めた。

――――続く

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