将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第5回

「そいつ、そんなに強いのか?」
「うん」
「おれより?」
「ジュンより強い」
「やってみなきゃわかんないね」
「だったらやってみりゃいいよ。とにかく次の次の日曜日、野球さぼれ。あっちは練習、こっちは大会だ」
「そうだなあ、大会は魅力だよなぁ」

月曜日の昼休み、トモアキは一組に行って、小松ジュンノスケを将棋大会に誘った。小松ジュンノスケはトモアキの親友だ。四年までずっとクラスがいっしょで、五年からは今度は将棋クラブでいっしょになった。青葉小の将棋クラブでただ一人トモアキより強いのが、このジュンこと小松ジュンノスケだ。

「でもあと二人は? クラブ員から選ぶのか?」
「うん、それしかないだろうな。半ちゃんあたりどうだ?」
「半田? 半田はおまえ、銀ヨコだぜ」
「銀ヨコ?」
「たまに本将棋やらせると、銀ってヨコ行けたっけ、とか訊いてくるんだ」
ダメダメと、ジュンは大げさに手をふる。

そのときトモアキはおやっと思った。二列後ろの席で佐野アサ子がトモアキたちの方を見ているのだ。気のせいじゃない。
(なんだ? 別のクラスに遊びに来ちゃいけないとでもいうのかな)
トモアキはそんなのバカバカしいと思うが、ときどきそういうケチなことを言うやつがいる。

「なあ、トモアキ、銀ヨコを大会に出しちゃ情けねえぞ」
「ん? あ、いいんだよ。ルール説明しただろ。おれたち三人が勝てばいいんだ。残りはコマが並べられればいい」
「チームメイトが桂と香逆に並べてたりしたら、おれ恥ずかしいよ」
「ぐちゃぐちゃ言うなって。とにかく出てくれるな?」
「ああ、そのかわりあとの二人、トモアキが誘えよ」
「いいとも。まかせとけ」

うけあいながらトモアキは後ろの席に目をやる。やっぱり見ている。
なんだ?
ほかの子ならまだいい。しかし佐野アサ子だ。

――――続く

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