将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第7回

青葉小学校では、水曜日の午後がクラブ活動の時間だ。将棋クラブが活動する五年三組に、アサ子は弟のトオルをつれていった。
月曜日に林トモアキがこう言ったからだ。
「佐野の弟には一度将棋クラブに来てもらおう。大会に出すかどうかは、どのくらいできるかやってみて、それから決めればいい」
トオルの将棋の力がどのくらいか、アサ子にはわからない。大会に出場できればいいと思うが、ダメならダメでしかたないだろう。トオルは今年のお正月にパパに将棋を教わったばかりなのだ。

五の三には男の子ばかり八人が集まっていた。
もじもじしているトオルをつついてあいさつさせる。
「……よろしく、おねがいします」
声が小さい。はきはきしたアサ子と違ってトオルはいつもおとなしい。よくデキる姉のかげにかくれて、いじけてるようなところがある。アサ子がときどき、おせっかいかなと思いつつも、トオルを前におしだしてやりたくなるのはそのせいだ。
「じゃあ、たのんだね」
トモアキとジュンに言ってアサ子は図書室に向かう。アサ子は読書クラブなのだ。

実を言うとアサ子は少し後悔している。六年になって入った読書クラブは、どうも活気がなくておもしろくないのだ。一人一人が勝手に本を読んでいるだけならクラブの意味がないとアサ子は思う。
だから一回目のときに提案した。同じ本をみんなで読んで感想を話し合ったり、それぞれが自分の好きな本を紹介する読書新聞を作ったりすることを、だ。
表立って反対する人はいなかった。そのかわり協力しようという人もいなかった。がっかり、である。
(こんなことなら演劇クラブにしとけばよかった)
アサ子がいればオリジナルの脚本だって書けるから、とヒトミたちが誘ってくれたのに、アサ子は断ったのだ。
ヒトミたちはなかなか活躍している。放送委員と協力して昼休みに放送劇をやっているし、七月には舞台発表会の予定だってある。これからでもなかまに入れてくれるかもしれないが、やりがいのある役はうまってるだろうし、だいいち、一度断わっておいて今度は入れてなんて、アサ子の性格では言えない。
だから今週も図書室でもくもくと本を読む。

――――続く

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