将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第9回

こうしてメンバー五人をそろえたトモアキとジュンは、土曜日、カズオのうちに行った。チームの大将を決めるためである。

カズオのうちは坂の上にあった。白いタイル張りの新築二階建てで、大きめの車庫と小ぎれいな庭がある。
家族がみんな出かけていたので、リビングに将棋盤を持ちこんで、いざジュンとカズオの決戦となった。
「一番勝負だぞ。勝った方が大将だ」
トモアキははっきりクギをさした。そうでないとジュンは、負けたら「もう一番!」とか言い出しかねない。

将棋は始まりから終わりまでを、序盤、中盤、終盤の三つに分ける。攻めと守りの形を作るコマ組みが序盤、戦闘開始からが中盤、いよいよ敵の王をつめにいく寄せ合いが終盤だ。
ジュンの序盤作戦は棒銀だった。飛車と銀の協力で敵陣突破をねらう棒銀はジュンの得意戦法で、トモアキはいつもこれでやられてしまう。カズオがどう応じるか、興味のあるところだ。うまい受け手があるならよく見て覚えておかねばならない。

とちゅう、カズオの兄のシュウイチが帰ってきた。
「おじゃましてます」
「ああ、ごゆっくり」
シュウイチはわざわざキッチンからジュースとクッキーを持ってきてくれた。
「カズオ、友達きたらおやつくらい出すもんだぞ」
親切な人らしい。

将棋の方は手が進んで中盤に入ったが、ジュンの銀は五段目にとどまったままで、カズオ陣に攻めこめない。カズオが飛車を浮いて横にきかせているのが大きいらしい。ジュンは援軍を送ろうと桂を跳んだが、これが悪手だった。歩で桂をとられ、おまけにそれがと金になって、形勢は一気にかたむいた。
トモアキには圧倒的に勝ちこすジュンも、四段のシュウイチにきたえられているカズオにはかなわない。これで大将はカズオだ。

この日、チーム名も決めた。
「青葉小+1」。たすいち、じゃなくて、プラスワンと読む。青葉小の四人ともう一人、そのまんまの名前だ。
準備はバッチリ整った。あとは大会の日を待つばかり。

――――続く

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