将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第14回

勝った相手は、ほっとしたせいか、無神経なことを言った。
「まあ二歩打たなくてもこっちの勝ちだったけど」

トモアキはむかっと来た。せめて一勝はあげておきたい、そう思って不利な将棋を必死でがんばり、追い上げたのだ。その努力がぜんぶムダみたいな言い方をされてはだまっていられない。
「でも、こうやっとけば、ぼくの勝ちだったろ」
「そうやるならこうやるね」
「だったらこう」
トモアキとメガネがやりあっていると、敵の大将がメガネに加勢した。
「いったん守っとけば楽勝だろ」
ジュンも負けじと口をはさむ。
「桂打ちだ、桂打ち」
トモアキ側にはカズオも加わり、これならどうだこれならどうだ、と敵陣を攻めつけていると、相手チームのだれかがぼそっと言った。
「どうせほかの四つ負けてんじゃないか」
もしトモアキがうっかり二歩を打たずに勝ったとしても一勝四敗で負けのくせに、くだらねぇや、って感じの言い方だった。

「なんだって?」
ジュンの声色が変わった。
「カンケイねえだろ。おれたちはこの将棋がどっちの勝ちだったか研究してんじゃねえか」
「二歩打ったんだからそっちの負けさ」
「バカヤロ、そのメガネが二歩打たなくても勝ちだとか言うから、そうじゃないって言ってるんだ。そっちが言い出したんだぞ」

大会運営係の人がやってきた。
「きみたちなにやってるんだ」
みんなぶすっとしてだれも答えない。
「勝った負けたでけんかしちゃいけないよ。楽しくやろう。な? 二回戦が終わったら、昼休みだ。あっちにおにぎりと牛乳が用意してあるから食べなさい」

まったくとんだハプニングだった。
腹の虫がおさまらないが、おにぎりは食べることにした。負けた上におにぎりまで食いそこなってたまるか、とジュンが言ったからだ。

――――続く

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