将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第16回

「だって、負けたときと違うメンバーでかたきを討ったってしかたないでしょ?」
アサ子は言った。理屈はもっともだ。しかし、昨日あれほど嫌がったアサ子が自分から出ようだなんて、どういう心境の変化だ?

「ちょっと待てよ。佐野が秋の大会に出なきゃいけないなんてことはぜんぜんねえよ。弟の方は出たければ出してやってもいいって言っただけ」
「じゃあ、メンバーを変えるつもり?」
「つもりとかつもりでないとか、そんなことまだ決めてないけど、強いやつがいればもちろん入団させる」
野球ファンのジュンはプロ野球チームのような言葉を使うのが好きだ。

「大会に出られるのは五人に決まってるでしょ。入る人がいたら、だれが抜けるの?」
「弱いやつ」
「かわいそうじゃない」
「勝つのが第一」
「へえ、じゃあ強い人がたくさん来たら、小松も抜けるんだ」
「おれより強いのがそんないるもんか」
「もしいたら?」
「いいよ。そのときは抜けてやる」
「小松、それで変だと思わない? もし、よ。すごく強い子をどっかから五人つれてきて、それでと金倶楽部に勝ったからって、意味がある? わたしたちが勝ったことになるの?」
「それは……」
ジュンがひるんだのを見てとってアサ子はたたみかける。
「それでうれしい? 満足? へえ、それでもいいんだ小松は。へえ、なるほど。ユニークな感性ね」
「ま、待てよ、待てって。そりゃ全とっかえじゃまずいけど、一人や二人入れ代わったっていいんじゃないか」
「一人でも五人でも同じことよ。メンバーが変わったら同じチームじゃないわ。ねえ、林もそう思うでしょ?」

理屈は通ってるし、しゃべりのリズムもいい。とうていトモアキやジュンが口でかなう相手ではない。

――――続く

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