将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第20回

それからシュウイチは将棋を指すときに守らなきゃいけないものが二つあるという話をした。
ルールとマナーだ。

「ルールを守る。これは当たり前だね。反則はしちゃいけない。試合ならその場で負けになる。二歩や打ち歩詰め、それから、持ちゴマを隠したりするのもルール違反だ。待ったもそう。
ルールっていうのはゲームそのものだから。これが守れなければゲームはできない。王をとられてるのに、わが軍にはまだ飛車と角がある、最後まで戦うぞ、なんて言う人とは将棋は指せないね」

トオルがくすっと笑った。

「じゃあ、マナーはなんだろう? ルールと違って、マナーは知らなくても将棋は指せる。でも、指せればそれでいいってもんじゃないよね。楽しくなくちゃ意味がない。マナーはそのためにあるんだよ。これだけ守っていれば楽しく将棋が指せるよって、そういうことなんだ」

みんなはまだ初心者だからあまり細かいことは気にしなくていい、と言って、シュウイチは二つのことだけ約束させた。ほかの人の将棋に横から口を出さないことと、きちんとあいさつすることだ。始めるときには「お願いします」、負けたときには「負けました」。

「負けましたって言うのはちょっとつらいけれど、いさぎよく、はっきり言うこと。ルールとマナーを守って正々堂々と戦うのが大切なんだ」

最初がかんじんと思ってのことだろう、シュウイチは将棋を指すときの心がまえを強調する。

「正々堂々と戦ったって負ければ悔しいよ。これはだれがなんと言おうと悔しい。いい戦いをすれば負けても悔いがないなんてうそだ。でも、堂々戦って負けた悔しさと、おたがいズルをして負けた悔しさとは違うんだ。わかるかな?
堂々戦って負けると、次は強くなって勝とうと思う。ズルをしあって負けた場合は――次はもっとズルして勝とうと思うんだ」

今度はみんながくすっと笑った。

「だから堂々とやろう。そうすれば強くなる。そうでないとズルがうまくなるばっかりだ」
シュウイチの話はわかりやすい。

――――続く

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