将棋ストーリー「王の腹から銀を打て」第36回

なぜぼくがあやまるんだ? ぼくは一生けんめい将棋をやった。ジュンは野球で忙しかった。ぼくの方が強くなった。それがあやまらなきゃいけないことか?
「大会出られなくてもいいの?」
アサ子はきついことをきいた。トモアキは答えなかった。
チャイムが鳴る。アサ子はため息をつき、くるりと背を向けた。

放課後、アサ子はカズオのうちに相談に行った。
「それじゃ新庄くんは小松がこのままやめてもいいっていうの?」
「そんなこと言ってないよ。でもどうしようもないことってあると思うんだ。トモアキくんと小松くんはずっと前からの友達なんだろ。ぼくなんかがどうこう口出せないよ」
「だれかが間に入った方がいいこともあるでしょう?」
「佐野さんが訊いても話さないなら、ぼくでも同じさ」
「男の子同士なら違うかもしれないじゃない」
「トモアキくんか小松くんが直接ぼくのところに来たなら話を聞くよ。そうじゃないのにしゃしゃりでるのはよくないと思う」
「冷たいのね」
カズオは何か言いたそうな顔をしたが、言わなかった。

「小松がもどらなかったら――大会は?」
「今さら他のメンバーでって気にもなれないよね」
「じゃあ?」
「うん」
なんてあきらめがいいんだろう。アサ子はあきれた。ダメだ。新庄くんもたよりにならない。

「だいじょうぶだよ、あの二人はきっと仲直りするさ」
ずいぶん気楽なことを言ってくれる。
「なんでそんなことわかるの?」
「わからない。でもとにかく様子を見てみようよ」
「今まで通り将棋をしながらただ待つってこと?」
カズオはうなずいた。
「新庄くん、ひらきなおってない?」
アサ子には目の前の男の子が繊細なのか図太いのかわからなくなった。あてもなく待つなんてアサ子にはとてもできない。

――――続く

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