絵本作家になったころ1「二つのデビュー作」

絵本作家になって16年ほどになる。長いか短いかわからないが、ふりかえれる程度の年月ではあろう。絵本の世界もずいぶん変わった。作り手も、作り手を取り巻く環境も。その中で自分は何を考えてきたか。何が変わり何が変わらなかったか。たまにはふりかえってみよう。

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ぼくにはデビュー作が二つある。初めて書いた絵本『ながいながいへびのはなし』と、初めて出版された絵本『とんでいく』だ。ふつう初めて出版された方をデビュー作というのだろうけれど、『とんでいく』は福音館書店の月刊絵本で数年しか書店流通しなかったから話がややこしい。デビュー作はなんですかと訊かれるといつも迷ってしまう。

『ながいながいへびのはなし』の話をしよう。

ぼくはもともと絵本ではなく童話や児童文学を書きたいと思っていた。実際書いてコンペに応募したりしていた。だからこの話のアイデアを思いついたときもまずは文章ですべてを表現したいと考えた。しかしうまくいかなかったのである。まあそういうことはよくある。

悩んでいたときにふっと浮かんだのが絵のアイデアだった。

『ながいながいへびのはなし』風木一人・作 高畠純・絵 小峰書店 2001

『ながいながいへびのはなし』風木一人・作 高畠純・絵 小峰書店

画面を上下に分け、上でへびの頭の話を、下でしっぽの話をする。背景をまったく変えてしまえば、頭としっぽがどれだけ離れているかがひと目でわかる!

へびの想像を絶する長さをどう文章で表現するかあんなに悩んでいたのに、絵にすれば一発なのだった。ぼくは自分のアイデアに感動し(笑)、絵本やるぞとその場で決心した。絵と文をうまく使えば、文だけでは絶対表現できないことが表現できることに気がついたのだ。

自分で絵を描けるとはまったく思わなかった。といって絵本の企画を文だけで持ち込むわけにもいかない。コンペにも応募できない。
下手でもいいから仮の絵を全ページ分描き、絵本の形にし、出版社に持ち込むことにした。
ツテは何もない。好きな絵本の奥付を見て、そこにある電話番号にいきなりかけた。
「絵本を作っています。見てください」

「ながいながいへびのはなし」風木一人・作 高畠純・絵 小峰書店

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※「絵本作家の仕事」は毎週木曜更新予定です。


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