絵本作家になったころ3「ストーリーとは何か?」

前回、『ながいながいへびのはなし』に対し3社から書き直しの提案があったと書いた。2社はただ「上下段はやめよう」だったが、1社は対案を出してくれた。福音館書店である。

「左右両方から読める絵本にして、左から頭の話、右からしっぽの話を始め、ふたりが本の真ん中で出会うというのはどうか?」

これは面白い提案だった。真剣に考えたあげく、やはり上下段の方がこの作品にはあっていると感じ断ったが、アイデア自体は捨てがたかった。何かできそうな気がした。
3ヶ月考えてひらめいたのが『とんでいく』(注1)だった。つまりこれは左右から始まり、真ん中で出会う絵本である。
詳しくは読んでいただくとして、簡単に種明かしをすれば、この形を思いついたのだ。

絵本「とんでいく」作・風木一人 絵・岡崎立

右向きに見ればタカやワシのような鳥に、左向きに見ればガンやカモのような鳥に見える。このだまし絵のようなシルエットを使って、両方向の絵本を作った。

もちろんアイデアの素をいただいた福音館の月刊絵本シリーズ「こどものとも」で作ったのだが、実は最初に作ったダミーは完成形とはずいぶん違うものだった。ストーリー性がとても薄かったのだ。
編集部から、そこが物足りない、もっとストーリーらしくという要望があり、そのときは正直無理ではないかと思った。同じ絵を両方向に見せる関係で、複雑な構成はできない。鳥がある地点からある地点に飛んでいく単純な話にしかならないのだ。

しかしあきらめず考えてみるものである。また3ヶ月ほど考えるとひらめいた。ストーリーとは何か? ストーリーらしくあるために必要なのは何か? それは「動機」なのだ。

鳥がある地点からある地点まで飛ぶだけではドラマでない。しかし何か動機を持って飛ぶならそれはドラマなのである。
タカにはスピード記録を作るという動機をあたえ、ガンの子にははぐれた家族を探し自分の湖に帰るという動機をあたえた。
すると両方向でしかもストーリーのある絵本ができた。

お話の中で何が起こるかは実はそれほど重要ではない。登場人物の感情が見え、そこに感情移入できることが重要なのだ。

※「絵本作家の仕事」は毎週木曜更新予定です。

絵本「とんでいく」作・風木一人 絵・岡崎立  絵本「とんでいく」作・風木一人 絵・岡崎立

(注1『とんでいく』作・風木一人 絵・岡崎立 福音館書店こどものとも2000年11月号)
両方向に読むから表紙も両側にある。左:タカ  右:ガンの子


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