絵本の文章を書く2「絵を描けないのはハンデか?」

「自分で絵も描いてみないか」と言われたことが何度かある。たぶんぼくがラフ(簡単な絵)入りの原稿を見せたからだ。

ぼくの原稿には3種類ある。
1、本文のみ 2、ト書き(文章による絵の説明)つき 3、ラフつき

ラフつきのものはさらに、
1、ポイントとなる数枚のみ 2、全ページ分
に分かれる。

使い分けは単純だ。編集者に見せる原稿の目的は、作りたい絵本のイメージを伝えることだから、本文のみで伝わると思えば本文のみで、それでは難しいと思えばト書きかラフを添えて提出する。

もっと前の段階、アイデアを練るためにラフを描くこともよくある。絵にして面白いかどうかは絵本にとって死活的に重要なことなので、頭の中で考えてわからなければ、実際描いてみて考えるのは当然だろう。この段階の絵は誰にも見せない。

星の花

「星の花」 記事とはいささかの関係もありません。

絵を描いたのなんて中学の美術の時間が最後だったから、仕事の絵が描けるなんて全然思わなかった。しかし、なんでも、すぐ無理と決めつけるのはよくない。自分でも気づかぬ才能が眠っているかもしれないではないか。プロである編集者がすすめてくれるのだから、がんばってみよう。

もともと全ページラフつきだった原稿を、どんな画材が適しているか考え、どんな画材のことも知らないのでひとまずパソコンで描くことにして、ソフトを購入してベジェ曲線の練習などしてみた。が、結局のところ3ヶ月くらいであきらめた。
3ヶ月! 早っ! なんという根性なし!

ぼくだって10年がんばればそこそこの絵が描けたかもしれない。可能性はある。しかしそうする気にはならなかった。
1作目が出版されたころは絵本を作るのに絵が描けないのはハンデではないかと思っていたが、数年でもう考えが変わっていたのだ。

ぼくはアイデア型の作家だから、1作ごとにまったく雰囲気の違うお話になるし、すると必要とする絵も違ってくる。
最初の4作『とんでいく』(絵・岡崎立)、『いっぱいいっぱい』(絵・Terry Johnson)、『ながいながいへびのはなし』(絵・高畠純)、『たまごのカーラ』(絵・あべ弘士)を見るだけでも、明らかに一人の画家が描ける世界ではない。
ぼくにとっては、1作ごとに最適な絵描きさんを探しお願いするのが最善と思うようになり、それは今にいたるまで変わらない。

しかし3ヶ月とはいえ、本番を描くならどうするか真剣に考えたのはいいことだった。イメージを伝えるだけのラフを描くのとは全然違う。細部まで考えなければならないし、なにより緊張感がある。ほんの少しだけ絵描きさんの気持ちがわかった気もする。

そういう意味で、「自分で描いてみたら」と言ってくれた編集さんはとても正しかった。描けなかったけれど貴重な勉強をさせてもらった。そこまでお見通しだったのかもしれない。

(※よく覚えていないが、さすがに3ヶ月ではなく半年くらいだったかもしれない。短くて根性なしであることに変わりはありませんが…)

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「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
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