絵本の文章を書く6「説得力ある言葉を持つ」

読者の方からも作家志望の方からもよく訊かれるのが「画家はどうやって決まるのか?」ということだ。
ぼくの場合(他の人もそうだと思うけれど)編集部と相談して決定する。

原稿を書いている途中からすでにひとりの絵描きさんの絵が見えてくることもあって、そういうときはもちろんその方を推薦する。
編集部(場合によっては営業部も)の賛同を得られれば決定するが、却下される場合もあり、すると新しい候補を探さなければならない。
原稿が書きあがった時点で、なんとなく絵柄のイメージはあるが具体的な画家名までは浮かばないということもあり、こういうときは担当編集者と意見交換した上で、双方候補を探し持ち寄ることになる。すぐに決まるとは限らない。双方とも納得する人が見つかるまで何度でも話し合う。

様々なタイプの優れた画家がいる中から、ひとり「この人!」と選ぶのは正直とても難しい。本当に正解かは誰にもわからない。しかし自分の好きな画家に自作の絵を描いてもらえるのは絵本の文章作家の最大の喜びであり、画家選定は悩みがいのある仕事だ。

「絵描きさんと意見が分かれたらどうするんですか?」もよくある質問である。
当り前すぎるが「話し合う」が答えだ。

ぼくはあとで後悔したくないので基本的に言いたいことはぜんぶ言うことにしている。相手が数百冊作っている大先輩であっても。だって、意見を言うことは失礼でもなんでもないのだから。互いの専門に対する尊敬の気持ちがあればけんかにはならない(はず)。
ただ打合せで絵描きさんと直接会う場合と会わない場合があって、会わない場合は編集者が意見を中継するから、ぜんぶ伝わっているかはわからない(けっこう微妙なところを書いておりますよ笑)。

話し合いにおいて大事なのは説得力だ。ラフを変更してもらいたいとき、最低なのは「なんとなくイメージと違うんですよねえ」みたいな伝え方で、これでは絵描きさんは直せない。もっと具体的に、どこが不満か、解決したい問題は何か、そのためにどんな方策がありえるか、じっくり考えた結果を伝える。
相手が理解してくれる言葉で、というのが重要で、そうでなければ何も言ってないのと一緒だ。

「よくわからないけれど作家がうるさいから直しておこう」などと思われたらこれも最低で、納得いかないなら直さないでほしい。話し合いというのはどちらの意見が通るかの力比べではなく、知恵を出し合ってより正しい道を見つけることなのだ。
「なるほど確かにそのほうがいいね」と思ったときだけ直してほしい。

これは実際仕事をしてきてとても強く実感したことなのだが、絵本の文章作家は説得力のある言葉を持たなければならない。感覚的なことでさえ「なんとなく」ではなく筋道だった誰でもたどれる言葉で伝えられなくてはならない。そういう仕事だと思う。

盆栽博物館の盆栽

盆栽博物館の盆栽。記事とはほぼ無関係です。

「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
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