絵本の企画を通す3「企画採用のプロセス」

前回少しふれたように絵本の企画採用プロセスは出版社によって異なる。作家は出版社の社員ではないからその詳細を知っているわけでもないのだが、お世話になっている編集者と話していると、なんとなく、ここはこういうやり方なのかと見えてきたりはする。

大きく分けると、中央集権制(笑)か合議制かだ。
社長あるいは社長の信任厚い編集長が決定権を握っているのが中央集権制。編集者はこの社長あるいは編集長に直接プレゼンして、やりたい企画の価値を訴える。なぜ今この絵本を出すべきなのか。
一方、編集会議や営業部との合同会議でプレゼンし採否決定するのが合議制。実際には会議を通した後、さらに上の決裁を仰ぐことが多いと思われるが、それが形だけのものか本当に吟味されるのかはケースバイケースで、作家に直接関わることでもない。

全体としては、合議制のところが増えているらしい。以前は一対一で社長にかけあっていたが今はまず編集会議を通さなければいけない、と複数の編集者から聞いた。
決め方の違いはたぶん企画の内容にも関わってくる。
合議制だと無難な企画になりやすいのではないか。出版に限った話ではないが、多くの人に賛成してもらおうとすると、思い切ったことはできない。本当に新しいものについていけるのはごく一部の人で、ほとんどの人はすでにあるものの改良版を好むからだ。
社長や実力派編集長が一存で決めるなら思い切ったことができる。どんな冒険的企画も「売れなかったらオレが責任取る」と言えばいいのだ(笑)。

個人的にはそういう人がいた方がいいと思う。するとその人の個性が出版社の個性になる。その人の姿勢がすべての出版物に現われることになる。
作家としても「ぜひあの出版社で出してみたい」とか「あの編集長が決めている限り自分の企画が通るわけない」とか判断しやすいというものだ。

編集者がぼくの原稿(テキスト)を会議にかけてくれる際、2通りのやり方がある。
テキストだけで会議にかけるか、画家候補を決めてからかけるか。
社によって違うのだが、後者にはやや疑問がある。候補を決めるといってもこの時点ではまだ画家に連絡していないから、無事会議を通過しても、目当ての画家に引き受けてもらえるとは限らないのだ。
引き受けてもらえないと、画家探しをやり直さなければならない。だいぶ時間をロスするし、悪くすると企画自体流れるケースもある。
やはりテキストはテキストのみで評価するのが本当ではないかと思う。よい絵本テキストであれば必ず適切な画家は見つかるものだから、この段階で一人に決定する必要はない。

企画書というのは基本的に社内資料だが、一度だけ見せてもらったことがある。ぼくの絵本の企画を通すために担当編集者が作成してくれたものだ。
まあ、こんなに誉められたことないというくらい誉められていて焦った。
担当編集者は、この作家と画家がいかに優れているか、この企画がどれほど素晴らしいか、なぜ今出さねばならないかということを全力で社内にアピールしてくれるのだ。
あれを見たら作家も全力で作らなければならない。いやいや見なくてもですが。

いとうひろし展 練馬区ふるさと文化館分室

先日、練馬区ふるさと文化館分室で「いとうひろし展」を見ました。「おさるシリーズ」最高です。

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