作家にとっての編集者1「この人としか作れない絵本」

おかげさまでこの連載の読者も増えてきました。中にはぼくの絵本を読んだことのない方もいらっしゃるでしょう。もっともらしいことを書いているけれどどんな絵本を作っているの?と 思われたら、ぜひこちらをご覧ください。<風木一人の絵本一覧へ


ぼくの初期の絵本6冊のうち、4冊は福音館書店、2冊は小峰書店から出ているので、この2社で絵本作家にしてもらったと言っていいのだが、にもかかわらず実はその後どちらとも疎遠である。
理由はあって、担当者が退社したり、絵本以外の部署に異動したりしたからだ。
作家は出版社とつきあうといっても実質担当編集者とつきあうのである。出版社には営業の人も経理の人も総務の人もいるだろうけれど会うことはまずない。担当編集者だけである。だからその人がいなくなると縁が切れてしまったりする。逆に担当だった人が同業他社に移るとこんどはそちらで一緒に仕事できたりもする。
言ってしまえば、担当編集者がすべて、だ。

自分を理解してくれる編集者と出会うことは作家にとってきわめて重要だが、なかなか選べるものではない。むしろ編集者が作家を選ぶものなのだ。
それでもできるのは、とにかくたくさんの編集者と会ってみること。
完全にアマチュアだったときはもちろん、絵本の仕事を始めてからも、いろんな出版社にアポを取っては出かけていった。とにかく作品を見てもらいたかった。
その多くはボツだったわけだが、だからムダだったわけではない。持込みというのは編集者が作家を見る場であると同時に、作家が編集者を見る場でもある。作品をあいだに置いて一対一で話せばその人がどんな絵本観を持っているかがわかる。どんな絵本が好きでどんな絵本を出したいと思っているかが見えてくる。
ボツになっても、ぜひまた見てもらいたい編集者もいれば、この人には絶対わかってもらえないと感じる編集者もいる。
「持込みの旅」は自分と絵本観が近い編集者を探す旅なのだ。
まるで方向性の違う編集者とは一緒に作れるはずがない。ただ方向性の違う意見もあることを知るのはムダではない。自作を客観的に見られるようになるからだ。

ぼくはけっこう長い旅をしたし、今も旅の途中といえる。ある程度仕事をして、つきあいのある編集者が増えても、ときどきは新しい人と会いたくなって持込みに行く。
すでにお世話になっている人に失礼ではないと思う。この人がいれば充分ということはないからだ。
作家に個性があるのと同様に、編集者にも個性がある。だから、ある作品はAさんと作りたいが、別の作品はBさんと作りたいことがある。
それぞれに自分の絵本観があって、その重なる部分で一緒に仕事をするということだ。絵本観が隅々まで完全に一致している人は原理的にいないと思う。
そう考えれば、信頼する編集者がいても、新規開拓の必要がなくなることはない。作家と画家のあいだに「このコンビでしか作れない絵本」があるように、作家と編集者にも「この人としか作れない絵本」があるはずなのだ。

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「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
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