絵本にシリーズものが多い理由『とりがいるよ』と『たまごがあるよ』

物心ついたころから本好きだった。そう言うと多くの大人がこう訊いた。「どんな作家が好きなの?」
とても不思議だった。なんてトンチンカンなこと訊くんだろう? 大事なのは主人公の名前だろ。作家の名前なんて知らないよ。全然知らない。

ぼくでなくても小学校低学年までの子どもなら、作家名など眼中にないと思う。そもそもぼくは絵本や童話を「誰かが書いた」などとは思っていなかった。物語はそこにあるのだ。誰かの空想の産物とかではなく、手を触れられるくらいリアルなものとしてそこにある。登場人物たちは、ちゃんと、いる。

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これが児童書にシリーズものが多い理由のひとつだ。一般書なら著者にファンがつくが、児童書はその要素が弱い。子ども読者は抱いて眠るくらい好きな本でも主人公の名前だけ覚えて、作家の名前は覚えない。大人読者にも近い傾向はあって『ぐりとぐら』が大好きという人でも案外作家と画家の名前は知らなかったりする。
すると同じ作家の本でも主人公が違えば買ってもらえない。前作のファンを引き継げない。そこでシリーズ化だ。

ぼくもシリーズ化のため続編を、と言われたことは何度かある。ありがたい話だから努力したが実現しなかった。まったく書けなかったこともあれば、何とか書いたがボツでお蔵入りとなったこともあった。
これは多分、ぼくの作り方に原因がある。
まず作品の核となるようなアイデアが浮かんで、そのアイデアを最大限に生かす形を探していくのがぼくの創作方法だ。すると、あとから同じアイデアでもう1作と思っても、どうしても前作を超えられない。前作での仕事が理想的であればあるほど難しくなる。

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昨年刊行の『とりがいるよ』をシリーズ化したいと言ってもらったとき、好評ゆえだから嬉しかったのはもちろんだが、同時に不安も覚えた。自分は続編を書くのは苦手で過去に何度か失敗しているじゃないか。
『とりがいるよ』のよさを引き継ぎながらどんな新しい絵本ができるか、初めはぼんやりと、だんだん集中して考え始めた。
案の定、簡単にはいかなかった。簡単にいかなかった、どころじゃない。髪とひげが真っ白になるくらい大変だった(ウソです)。

しかし、あるときから流れが変わって、すっと気持ちよく進み始めた。そしてできたのが『たまごがあるよ』だ。
なぜうまくいったのか、何がこれまでと違ったのか、自分なりの分析を<次回>書こうと思う。

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(by 風木一人)


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