作家にとっての編集者4「作家と編集者の役割分担」

作家の役割は一番深く潜ることである。誰も潜らないところまで行って未知の宝を拾ってくる。
編集者は浅瀬で待っていて、作家が拾ってきたものに「これはダイヤ」とか「これは石ころ」とか言う。
「潜らないヤツにわかるもんか!」とキレてはいけない。そういう役割分担なのだ。

深く潜らなければ見えないものを、深く潜っていない人にも見えるようにするのが、創作という仕事だろう。
深く潜るのが作家の役割なら、潜水中の作家に対して、潜っていない人からどう見えるかを教えるのが編集者の役割だ。だからいっしょに深くは潜らないし、たぶん潜ってはいけない。潜らなければ見えないものがあると同時に、潜ると見えなくなってしまうものもあるはずだから。

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ぼくはアイデア型の作家で、あるアイデアに惚れると、それを極限まで純粋な形で提示したくなる。おまけの小ネタとか付加的な要素はいっさい入れず、ぎりぎりまでシンプルにして、メインアイデアの面白さだけで最初から最後まで通そうとする。

しかし純度が高すぎるものは読者を選ぶ。ぼくととても近いタイプの人にしか届かない。計算しつくされたものには遊びがないからだ。
創作脳が熱くなっているときは「アイデアと心中、上等じゃねえか」という心理に陥っているが、優秀な編集者はそこにうまくストップをかける。
仕事なんだから、作家の自己満足で終わらせるわけにはいかない。ちゃんと読者に届くように軌道修正させるのだ。
過去の仕事で「(あとから考えると)あれは絶妙だった」と感じるアドバイスの多くは何か混ぜ物を入れる提案だった。あえて純度を落とすことによって、マッチする人が増える。結果的に広く届くものになる。
もちろん混ぜれば何でもいいわけではなく、何なら混ぜてもいいか、メインアイデアが壊れないか、正しく判断するのはとても難しく、なにより広い視野が必要なことで、それは潜っていないからできることでもある。

こういう話は、実例を挙げたほうが圧倒的にわかりやすいのだが、ここでは抽象的な話になってしまった。講座や講演では絵本を見せながらお話しします。

あと、「混ぜ物をする」提案がぴたりハマったのは、ぼくがそぎ落とすタイプの作家だからで、足したがるタイプの作家には「捨てましょう」と言うのが編集者の仕事なんだろうと思う。
作家ごと、作品ごとに、最適な対応はすべて違う。決まったやり方なんてない。だから編集の仕事は難しい。

※難しい話になったのでカワイイ動画貼っておきます(^◇^)/

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「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
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