作家にとっての編集者5「著者献本リスト」

新しい絵本ができたとき出版社から「献本リストを送って」と言われることがある。
本を広めていくために力になってくれそうな人がいたら教えてほしい、できたばかりの本と紹介文を送っておくから、という意味だ。
典型的な送り先は、絵本の書評を書いている個人や、絵本の書評が載る新聞や雑誌の編集部だが、ほかに芸能人でも幼児教育の専門家でも小児科の先生でも、目的に合致していればリストに入れていいのではないかと思う。

以前、お世話になっている編集者Hさんに、どんな人まで入れていいのか訊いてみると、「別に決まりはありません。風木さんが贈りたい人なら誰でも。他社の担当編集者さんとか全然オーケーですよ」と言われて「へえそうなのか!」と思った。
他社でも活躍してくれれば作家としての評価が上がり、自社から出た本も売れるのだからと説明してくれた上で、Hさんは、
「作家さんにとってプラスのことは全て弊社にとってプラスと考えています」と言い切った。
編集者にはこういう視野の広いカッコいい人がいるのだ。

ちなみに出版契約ではたいてい50~150部ほどを宣伝用としていて、この分は印税も支払われない。売る本ではなく、出版社が宣伝のために使う本で、著者推薦の献本もここから充当される。だから「贈りたい人誰でも」と言ってもらっても数には当然限りがある。
あと、Hさんはああ言ったけれど、出版社によっては「他社の担当者NG」のところももちろんある。考え方はさまざまだ。

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別の編集者、Nさんの話。
ぼくは絵本を書く前、童話や児童文学を書いていて、公募のコンテストに応募したりしていた。講談社児童文学新人賞には3年連続で応募して、うち2回最終選考まで残ったが受賞はできなかった。その後絵本に興味が移り、長編は書かなくなってしまった(関連記事こちら)。

15年ほどのち、何かのパーティーの帰りに講談社の編集者Nさんと地下鉄がいっしょになり、児童文学新人賞に応募していたことがあるんですよ、とお話ししたら、なんとNさんは覚えていた。「異世界が舞台のファンタジーで、爬虫類系のキャラが出てきましたよね?」
受賞作ではない。最終選考に残っただけで落選作である。しかも15年前だ。
編集者の、作品に対する記憶力はすごいなあと思った。

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「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
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