作家にとっての編集者6「編集者に最も必要なこと~ある社長さんの話」

10年くらい前、小さな絵本専門店の店主に聞いた話だ。仮にAさんとしておこう。
ある日、出版社B社の社長さんから電話が入った。こういう用件だった。「新しく絵本部門を立ち上げたい。ついては責任者をお願いできないか」
Aさんは驚いた。出版社で働いた経験はなかったし、B社の社長もまったく知らない人だ。だから当然訊きたくなることを訊いた。「なぜ自分に?」

社長は説明した。
Aさんのことは新聞で知り、すぐこの人だと思った(少し前にインタビュー記事が大手新聞に掲載されていたのだ)。編集経験がないのはまったく問題でない。自分が重視するのはそのジャンルへの愛と知識で、編集実務などやっていれば誰でもできるようになる。

B社は比較的新しい出版社で、扱うジャンルを徐々に広げながら急成長中だった。社長の話では、これまでも編集経験のない人を編集長に迎えて成功してきたと言う。
なにぶん突然のことだから、Aさんは少し考えさせてもらうことにした。考えたのち結局「自分がやりたいのは絵本のお店で、出版ではないから」と断った。
そのかわり人を紹介した。店の常連に他社の絵本編集者がいて、その人は今の会社を辞めたいとAさんに漏らしていたのだ。

いい話を聞いたと思った。
編集経験よりも、愛と知識。
なるほど。

編集は総合的な仕事で、覚えなければいけないことは山ほどある。しかしそんなことは覚えればいいのだ。愛と知識がなかったらどうにもならないし、この二つは一朝一夕に身につくものではない。愛なんて10年かけたって生まれないところには生まれない。

やはり、自分で出版社を作り大きくするような人物は違う。本質を見抜いているなあと感じる。
1000字ほどのインタビューを読んだだけで「この人に任せよう」といきなり電話をかける決断力もすごい。

ちなみにぼくはB社で1冊お世話になっている。Aさんの紹介でB社に入った人に担当してもらった。
あのとき、出版をやりたいわけではないと言ったAさんは、数年前、お店でリトルプレスを始めた。
10年経てばいろいろ変わる。

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