絵本の勉強法3「既存の童話・昔話をコンテにしてみる」

「絵と文、どちらが大事か?」という質問も多い。絵がよければ文はどうでもいいとか、その逆とかはありえないので、どちらが「より」大事かという意味だろう。
答えはもちろん「どちらも大事」なのだが、その手の質問をする人たちが見落としていることがある。
絵の勉強も文の勉強も大事だが、じつはそれだけでは絵本はできない。もっとずっと大事なことがある。

「絵と文を組み合わせる」勉強だ。

絵だけを何百枚描いても絵本は上達しない。文だけを何百枚書いてもやはり絵本は上達しない。絵と文をいっしょに考えてこそ絵本が作れるようになる。
「この絵とこの文を組み合わせたら読者にこういう感情が伝わる」――が絵本表現の基本なのだ。
しかし初めから絵と文をいっしょに考えられる人は少ないので、ぼくの講座でよくやったのは既存の童話や昔話を絵本化する課題だった。

まずいろいろな本を読んで童話か昔話を選んでくる。いくつか条件がある。その条件は「絵本とは何か」という問題と深く関わっている。

1、つまらない作品だとやる気が起きないので、自分が好きなものを探す。

2、絵本にするのだからなるべく短い方がいい。長いと話の内容のごく一部しか絵にできない。すると絵本というより「挿絵入りの本」になってしまう。

3、絵としての見せ場がある話を選ぶ。話として面白いかと絵本化に適しているかは別問題だ。絵で見せてこそと感じるシーンが複数なければ、話として面白かったとしても絵本には向かない。

講座のときはぼくが選んだのだが、この条件だけでも該当する作品を探すのは案外難しかった。なんといっても長さが難関だった。童話としては短いものでも絵本にしようとすると長すぎる。新美南吉、宮澤賢治、アンデルセンなど有名どころの童話集をあたったが、使えるものは少なかった。昔話集のほうが短い良作を見つけやすかった。

【画像クリックでamazonへ】(※「ごんぎつね」は新美南吉18歳の作だという)

ちなみにぼくが絵本に適当な長さと考えているのは、15見開き(15シーン)に収められる長さである。単純に文章量の問題ではなく、絵にしたいと思うシーンが15以下であることだ。

1、課題テキストが決まったら、まずは場面割り。じっくり読んで15シーンに分ける(11でもよい)。各シーンがどんな絵になるか、なんとなくでもイメージしながら進める。

2、次はコンテ作り。1枚の大きな紙(たとえばA3)にコマ割りして15シーンを全部描く。コマは小さいので細部は描かない。そのシーンの絵で何を伝えるかだけはっきりさせる。

3、ダミー作り。ダミーは絵本の雛型だ。コンテで小さく描いた絵を1枚の紙に大きく描く。ある程度細部・背景も描く。文章の位置も考え書き入れる。全ページそろったらのりやテープを使って本の形にする。製本方法はなんでもよい。1ページずつめくれる形にすることが重要。

3つの工程それぞれに大事なことが含まれている。

場面割りは絵本の命と言っていい。同じ話でも、話のどこでページをめくるように作られているかで、生きも死にもする。ドラマティックにも退屈にもなる。どこをより強く伝えたいかという作り手の意志が場面割りを決定する。

コンテはぜんぶを一望にできる点に意味がある。細部にこだわらず全体の流れをチェックする。どこに予感があり、どこに盛り上がりがあるか。主人公の気持ちの移り変わりを絵で表現できているか。似たようなシーンが多すぎないか。

ダミーの意味は「めくれること」そのものだ。同じ絵と文章でも、ばらばらの紙の束として読むのと、めくれる状態で読むのとでは全然違う。絵本論の多くで「めくりの効果」が強調されるのはじつに正しいことなのだ。それを実感するだけでも本の形にしてみる価値がある。

文章のみの作品をどう絵本にしていくか、この課題から学べることは山ほどある。とくにお話が浮かばないから絵本が作り始められない人はやってみてほしい。

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「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
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