絵本の勉強法4「おべんとう絵本ワークショップ」

絵本で表現するとは絵と言葉を組み合わせて使うことだ。ばらばらにではなく組み合わせて。生かしあうように。

前回の「童話・昔話を絵本化する」が「言葉を見て絵を考える課題」だったのに対し、「絵を見て言葉を考える課題」としてぼくが好きなのが「おべんとう絵本」だ。
絵本作家長谷川集平さん考案のワークショップで、長谷川さんの著書『絵本づくりトレーニング』に詳述されている。

「絵本づくりトレーニング」長谷川集平著 筑摩書房

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ぼくは20年ほど前絵本に興味を持ったとき、絵本の作り方の本もあれこれ読んだ。一番参考になったのが『絵本づくりトレーニング』と続編の『絵本づくりサブミッション』だった。

ぼく以外にも近い世代の絵本作家でこれに影響を受けたという人は多い。小手先の技術ではなく、深いところを理論的に語るのが特徴で、「絵本を学ぶ本」の中でも異彩を放っている。おべんとう絵本の他にも数々の独創的ワークショップが載っていて実用度も高い。その後出た本にもいいものがあるだろうが、1冊おすすめするならぼくはこれを選ぶ。

「おべんとう絵本ワークショップ」は、長谷川集平さんがご自身の絵本講座で実践しながら発展させていったもので、じつに細部までよくできている。ぼくも自分の講座で何度も使わせていただいたが、その「引き出す力」にはいつも驚かされた。

具体的手順は実際本を読んでいただくとして、特にすばらしいと思う点2つを挙げておく。

1、絵が描けない人でも絵本表現の基本が理解できる。

絵本表現の基本とは前回もふれた「めくりの効果」だ。めくったら次の絵が現われる。そのようにして複数の絵を連続的に見ると、1枚1枚にはなかった意味が生まれてくる。それが「めくりの効果」だ。

言い換えると、ある絵と次の絵には関係がある、ということ。当り前すぎるほど当り前だが、これを意識して効果的に使うのはけっこう高度な技なのだ。初心者はどうしても1枚1枚ばらばらに考えてしまう。

それでも絵が得意な人はたくさん描いているうちに絵と絵を関係づけることの大切さに気づくものだが、絵が苦手な人、絵本の文章作家を目指している人がこの感覚を身につけるのはとても難しい。

おべんとう絵本は最初から最後まで黒い丸しか描かない。どのページにもいろんなサイズいろんな数の黒丸を描くだけで、いわゆる「絵」は描かない。それでもちゃんと自作の絵本ができあがる。絵心ゼロでも絵本が作れるたぐい稀なワークショップなのだ。

2、偶然の力を感じる。

創作は実力だけでなされるものではない。もし実力だけなら同じ作家の作品はすべて同じレベルになるはずだが、実際にはどんな作家にも出来不出来がある。実力プラス偶然で作品ができている証拠だ。

どんなレベルの作品も実力プラス偶然でできているが、優れた作家ほど偶然を利用するのがうまい。初心者は実力だけで作ろうとする。わかっていることだけで計画的に作ったら、自分にとって新しいことは何もないわけで、そんなものが面白いわけはない。

おべんとう絵本の制作手順には一見瑣末な、どうしてそうするのかわからないような点が含まれているが、これが痒いところに手の届く配慮であることがやってみるとわかる。
決められた手順どおりやれば自然と偶然が入ってくるようにプログラムされているのだ。しかも多すぎも少なすぎもしないようコントロールされている。

黒丸を描いて、それを並べ、製本してから話をつける、一連の作業の中で「偶然が自分の中から何かを呼び出してくれる感覚」を得られる。

何十年か生きてきたのだ、誰だって表現したいものを抱えている。しかし奥の方にあるものを呼び出すには自力だけでは不充分で、偶然の助けがいる。
おべんとう絵本で偶然の力を感じることは、偶然を利用するための第一歩だ。

さあ、やってみたくなりましたよね?(笑)
本屋さんへGO!

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「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。

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