絵本のデザイン(装丁)「絵本に専門性のあるデザイナーは少ない」

ぼくが初めての絵本を出した2000年と今で変わったことの一つに絵本のデザイン事情がある。デザイナーが入ることがとても増えた。以前は画家と編集者が相談してデザインもやってしまうことが多かった。

基本的にはいいことだと思う。デザインは専門性の高い仕事だし、一般書ではずいぶん昔からデザイナーがチームに加わるのは当り前だ(もっと昔には一般書も編集者がデザインしていたらしい)。
絵本で遅れたのは一つには予算の関係、もう一つには画家というビジュアルの専門家がすでにいるからではないだろうか。
絵とデザインは違う。とはいえからみあう部分は当然あり、作家+編集者の文章系チームにデザイナーが加わるのと、画家を含むチームにデザイナーが加わるのは微妙に違う。
実際画家とデザイナーの意見が合わず修正が度重なるケースはいくつも見た。結局デザイナーに降りてもらい画家が自分でやりなおしたケースすらあった。
絵本のデザインは難しいのである。
理由の一つは絵本に専門性のあるデザイナーが少ないからだと思う。
絵本(児童書)と一般書では「いいデザイン」が違う。それをわかっている人がまだまだ少ない。
その理由もぼくに言わせればはっきりしていて、絵本デザインの仕事があまりにも少なかったからだ。
仮に、あるブックデザイナー(装丁家)が1年に100冊の依頼を受けるとしよう。そのうち絵本の依頼が数冊だったら、絵本の特性を考え抜き、絵本の市場を精査して技を磨こうとするだろうか。するわけがない。数十冊依頼が来るジャンルこそ、その人がもっとも精魂かたむける主戦場だろう。
絵本を知らない人がいいデザインをできるわけはない。日ごろ絵本と接点のない人が一夜漬けでこなせるほど絵本は甘くない。専門性を獲得するには手間も時間もかかるものだ。

絵本をよく知る優れたデザイナーもいることはいる。そういう人には当然のように仕事が集中して、ますます技は磨かれていく。しかし少数の人に集中しすぎている状況もよくはない。デザインの多様性を欠くからだ。

絵本の世界にはもっと優れたデザイナーが必要だし、そのためには絵本デザインの仕事が増えなければならない。安定した仕事の供給があってはじめてデザイナーは絵本に特化した技術を時間をかけて磨くことができる。
だから、いまの流れは正しいと思う。絵本デザインの仕事が増え、絵本に詳しいデザイナーも少しずつは増えていると感じる。編集者や作家の側の「デザイナーとのつきあい方」もいくらか上手になってきたのではないか。
いまはきっと過渡期なのだ。

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「絵本作家の仕事 by 風木一人」は毎週月曜更新予定です。

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