逆転の発想で作った真夏の怪獣絵本『かいじゅうじまのなつやすみ』(風木一人・作 早川純子・絵 ポプラ社)

ウルトラマン世代である。といってもウルトラマンは近年もシリーズ新作が作られているようだから正確に言うと、初代からレオあたりを見て育った世代である。初代やセブンはたぶん再放送で見たのだと思う。

ウルトラマンが好きだということは怪獣が好きだということでもあるだろう。怪獣は単なる悪者、敵役ではない。カッコよかった。人間の町を木っ端微塵にするところが。
町を木っ端微塵にするのは、人間から見れば悪いことである。最低最悪である。しかし怪獣にとってはどうか? あの人たち(怪獣)はなんで町を壊していたんだろう?
ウルトラ怪獣の中には明確な動機があって人類や文明を攻撃している者もいたが、なんの動機もなくただ破壊の限りを尽くしているような者もいた。なんで?

人間に人間社会があるように怪獣にも怪獣社会があるとしよう。怪獣社会の価値観では破壊はカッコいいことなのではないか? 町を木っ端微塵にした者は賞賛され尊敬されるのではないか? だから彼らは登場したとたん迷いなく目の前のビルにラリアットをお見舞いするのではないか?
そして夏休みに故郷の怪獣島に帰り、一年ぶりに幼なじみに会った怪獣たちはこんな挨拶を交わすのではないか。
「やあ久しぶり。たっぷり壊したかい?」
「あったりまえさ。あさ壊して、ひる壊して、よる壊す。それがおいらのモットーだ」

こんな妄想から『かいじゅうじまのなつやすみ』は生まれた。

絵本「かいじゅうじまのなつやすみ」風木一人・早川純子・ポプラ社

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ぼくの10冊目の絵本である。たまたま9冊目の『ぷしゅ~』と同時期の制作で、どちらも夏の絵本であるため、ぼくの中ではペアの印象が強い。
2006年6月、2冊同時の原画展を早川純子さん、石井聖岳さんと協力して開催した。会場は目白のブックギャラリーポポタムだった。
早川さんも石井さんもぼくもまだ新しい作家だったし、ポポタムもまだできて1年の新しいお店だった。みんな自分の道を模索していた。とても懐かしい。
展覧会のタイトルは「ナンセンスの夏☆かいじゅうの夏」で、DMのデザインは今ホテル暴風雨で「魔談」を連載している北野玲さんだった。

ポポタム3人展2006

石井聖岳・早川純子・風木一人3人展「ナンセンスの夏☆かいじゅうの夏」於ブックギャラリーポポタム2006

このときは節目の感覚がとてもあった。それまで目の前の1冊を作ることに夢中だったが、このころから俯瞰的な考え方が入ってきた。
自分はどんな絵本を作ってきたのか、どんな絵本を作っていきたいのか、いったん立ち止まって考えたくなった。
作り始めてからずっと、自分はもっといい絵本を作れると、次はもっと良くなると信じていて、そんなことは当り前だと思っていたが、初めて、当り前ではないと感じた。

当時目白に住んでいてポポタムから徒歩10分だったこともあり毎日在廊し、たくさんのお客さんと話をした。会場には早川純子さん、石井聖岳さん、ぼくが手掛けた絵本は全点平積みにしてあった。3人合わせてもまだその程度の数だった。
作ってきたものに自信はあった。それだけにもっといいものを作れるのは当り前ではないと感じたのだ。
それからずっと、自分に問い続けている。
過去の一番いい作品よりももっといい絵本を作れるのか? そのためにどうすればいいのか?
作れないならやめてしまえ。
いまのところまだ続けられている。

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「絵本作家の仕事 by 風木一人」は毎週月曜更新予定です。
ホテル暴風雨にはたくさんの連載があります。小説・エッセイ・詩・映画評など。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内>


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