おしゃれなイノシシ登場? 絵と文のズレを楽しむ絵本『おしゃれなのんのんさん』(風木一人・作 にしむらあつこ・絵 岩崎書店)

絵本「ゆうびんやさんのホネホネさん」にしむらあつこ・福音館書店

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にしむらあつこさんは『ゆうびんやさんのホネホネさん』などホネホネさんシリーズで有名な作家さんだ。絵と文ともにご自身で手がけられることもあるし、本作のように絵だけ担当されることもある。
ご両親も絵本作家で、お父様は『がたごとがたごと』などの西村繁男さん、お母様は『あがりめ さがりめ』などのいまきみちさんだ。
絵本界の西村さんといえば西村敏雄さん(『バルバルさん』など)もいるが、敏雄さんはあつこさんのご親戚ではないらしい。
西村敏雄さんと『たいようまつり』を作ったとき「たまに西村繁男さんと間違われます」とおっしゃっていた。

絵本「おしゃれなのんのんさん」風木一人・にしむらあつこ・岩崎書店

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のんのんさんはイノシシだ。
「はだかんぼうもわるくはないが、たまにはおしゃれをしてみよう」
と山から下りてくる。
イノシシは、まあ、どう見たっておしゃれなイメージではないだろう。だから、おしゃれさせてみようと思った。
お店の人のアドバイスで一度は別イノシシのように変身するのだが、帽子を川に落っことして、それを追いかけるうち、結局また、はだかんぼうになってしまう。
帽子を取り戻し、もと来た道を帰りながら、脱ぎ捨てたシャツやズボンを拾い集め、順番に身につけていく。
その身につけ方が問題だ。
文章だけ読むと何もおかしなところはない。帽子をかぶり、クツをはき、ズボンをはいて、シャツを着る。
しかし絵を見ると圧倒的におかしい。
読み聞かせすると、子どもたちが思いきりツッコミを入れてくれるのが楽しい。
「のんのんさん、ちがうよ! そうじゃない!」
おかしな絵と、おかしくない文、そのズレで楽しませるのが絵本ならではのやり方で気に入っている。
ある種の冗談はまじめな顔で言ったほうが面白いのと似ているだろうか。

この絵本は色指定で作られている。原画は黒1色で描かれ、それを印刷段階で「ここはこの色」と指定して着色している。
線は茶色に変わり、のんのんさんのシャツは青に、ズボンは黄色になった。
こういう作りだと完成した絵本と原画の違いがとても大きいので、原画展をやると面白い。
今までにジュンク堂池袋本店、東京都民銀行神田支店、岡谷市の小さな絵本美術館で原画展を開催していただいた。ご来場の方には、絵本と見比べて驚いていただけたのではないかと思う。
銀行で原画展というのは意外だろうし、ぼくも聞いたとき「えっ?」と思ったのだが、東京都民銀行神田支店にはミニ図書館とミニギャラリーがあったのだ。さすが本の街神保町の銀行だなあと、初めて行ったとき、ちょっと感動した。
今年5月に合併して「きらぼし銀行」という名前に変わったそうだ。ミニ図書館とミニギャラリーが健在であってくれるといいのだが。

刊行した2008年に絵本ナビで『おしゃれなのんのんさん』について語ったインタビューがあります。ぼくが描いたのんのんさんもちらっと登場します。今よりヒゲが長い。のんのんさんのじゃなくて、ぼくの。
絵本ナビ スペシャルコンテンツ

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