言葉のリズムを楽しむ絵本『おばけのもちつき』(作・風木一人 絵・竹内通雅 世界文化社 おはなしワンダー2008年12月号)

世界文化社の中澤由梨子さんから「竹内通雅さんと絵本を作ってみませんか?」と依頼があった。中澤さんとはワンダーブックの仕事を何度かしていて、そのおり今後組んでみたい絵描きさんとして竹内通雅さんのお名前をあげたことがあったのを覚えていてくれたのだ。こういうのは嬉しい。
あれこれ考えたのち書いたのが『おばけのもちつき』。タイトルそのまんま、おばけがお餅をつく話である。
だから初めから通雅さんの画風が頭にあって書いた。ぼくにとっては珍しいケースである。ストーリーが浮かんでから絵描きさんを考えはじめることのほうが多い。

おばけとおもちは似ている、と思ったのが発想の原点だ。白い、伸び縮みする、「お」で始まって3文字……。本当はそんなに似ていないかもしれない。しかし大事なのは「似てる! 面白い!」と思うことなのだ。
思い込めばお話は書ける。思い込む熱量が大きければ大きいほど面白いお話になる。作家自身がのめりこめないようでは絶対面白くならない。
「客観的に面白いかどうか」より「自分が面白がれるかどうか」が重要なのだ。その熱量は必ず読者に伝わる。

絵本「おばけのもちつき」風木一人・竹内通雅・世界文化社おはなしワンダー

夜の幼稚園で、3匹のおばけが歌いながら踊りながらお餅をつく、そのノリノリぶりが売りの絵本だから、歌の部分はもちろん、地の文もリズムにこだわって書いた。竹内通雅さんの絵とからんで生まれるグルーヴ感をぜひ味わってほしい。

文章ができ、中澤さんが企画を通してくれた後、直接の担当として保立眞理子さんを紹介された。たぶん中澤さんは同時期に抱えている企画が多すぎたのだろう。
保立眞理子さんはベテランの編集者で当時はフリーランスで仕事をされていた。保立眞理子さんのお嬢さんは版画家の保立葉菜さんである。
ぼくは眞理子さんからの年賀状で葉菜さんの木版画を知り、のちに『ちゃっくりかき』(2017大隅書店)という絵本の絵をお願いした。さらにホテル暴風雨のBFUギャラリーで個展を開催していただき、今年のホテル暴風雨2周年展(ギャラリー路草)にもご参加いただいた。
仕事は人だなあと思う。人から人へつながり広がっていくのが楽しい。いや、仕事に限ったことではないか。どんな世界でも、魅力的な人は魅力的な人につながっている。

刊行時のあとがきを再掲しよう。最後にある「小さなおばけの機転」は竹内通雅さんのひとことから生まれた。お読みいただく機会があったらぜひ裏表紙までご覧いただきたい。

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『おばけのもちつき』あとがき

おばけたちだってわかっているんです。先生がおもちつきの準備をしたのは自分たちのためじゃないことくらい。でも、どうしてもやってみたいし、食べてみたい。きっと去年のおもちつきを天井裏から見ていたんでしょうね。楽しそうなおもちつきと、美味しそうなつきたてのおもち!

子どもたちのおもちを横取りするのはおばけだって気がとがめます。それで屁理屈こね始めるんですね。おばけとおもちはそっくりだ、だからおもちはおばけのものだ、って。後ろめたいことをするとき屁理屈つけて正当化するのは、人間もおばけも同じであるようです。

この絵本の見せ場はなんといっても、大中小のおばけが歌いながら踊りながら、楽しくおもちを作っていくところ。

♪なべはぐらぐら おこめはむんむん
♪ぺったらぺったん かえしてぺったん

ぜひ子どもたちと一緒に声を出して、ことばのリズムをたっぷり味わってください。

悪いことはできないもので、夢中になっているうちに夜が明けてしまいます。おもちを横取りしようとしたとはいえ、あれだけ一生懸命働いたおばけたちが少しもおもちを食べられないのはちょっとかわいそう……と思ったら、あまり働いていなかった小さなおばけが最後に機転のきくところをみせてくれます。はい、めでたしめでたし。

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「絵本作家の仕事 by 風木一人」は毎週月曜更新予定です。
ホテル暴風雨にはたくさんの連載があります。小説・エッセイ・詩・映画評など。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内>


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